波形モニター画面に表示される、人間の発声域を超えた第3の帯

「本文書は2026年4月に入社した新人Bとして、勤務三ヶ月目に作成された分析報告から抜粋したものです。」

第一報(報告書No.01)

日付:2026年3月29日 / 担当クラス:第三音域分析班 / 記録者:B氏

「本日、Cコールセンターの録音データから通常範囲を超えた周波数帯を検出しました。計測値は48.7Hzおよび18,900Hz以上です。」

第四十九通来电の受信音響波形を確認した際、通常の人間の話し言葉に含まれない二種類の共振成分が観測されました。前者は低すぎて聴覚では感知不能(触れることすら不可能)、後者は可聴域上方にあり犬にしか聞こえないとされています。中間帯域は何もなく、ただ空白でした。

ただし録音装置は正常動作中であり、フィルタリングや干渉の痕跡は見られませんでした。

第二報(内部メモ)

日付:2026年4月10日 / スキップ通知

担当上司からの指示書により、『異常検出時の応答』として『確認済・正常帯域外のため対応不要』と記録するよう求められました。ただしこの指示は口頭でのみ行われました。メールやチャット等には一切残っていません。

第三報(分析ログ抜粋)

日付:2026年4月15日 / 担当者:S氏・T氏

「本日、第三音域班から追加で十二通のデータが回送されてきました。全件いずれも同系統の周波数含有比を示しています。」

S氏による手記注記より引用:

この班に入ってきて三日目だが、毎日同じ話者が登場するようになったように思う。声の種類は違うようでも、背景のリバーブ成分が一致している気がする。 確認したいのは、録音データ自体が本当に『録』られているのかということだ。元となる音源がどこにあるのかがわからない。

第四次報告(最終記録として提出)

日付:2026年4月18日 / 記録者不明

以下、録音波形のスペクトログラムデータから転記された分析結果である。

■第72通来电(2026.4.3 受信)

  • 周波数帯域A(低周波):持続音として記録されるが、録音開始直前に既に出力中である。
  • 周波数帯域B(高周波):特定の単語に含まれる場合のみ検出。その際、可聴帯域で『空白』が発生する。

■第89通来电(2026.4.7 受信)

  • 周波数帯域Aがさらに低下した。
  • 周波数帯域Bの内容を逆再生した際に何らかの構造を確認可能との旨、同僚M氏より報告あり。

■第301通来电(2026.4.15 受信)

  • 周波数帯域AとBの間にある『空白』が可聴化された際、周囲の人間に『声として聞こえた』者は五人いた。ただし全員違う内容を報告したとのこと。

補足事項

*最終記録から二週間経過した現在でも班は稼働中であるが、記録者の氏名については確認できず、記録媒体への書込みも停止している。**

「空白」の部分は、録音機器を別の用途に転用した後のことだと推定されています。 しかし、転用された機材の一部からは未だ信号が出力されており、それは今もこの部屋の中に存在し続けています。**