風眼の視界

台湾では夏になると頻繁に台風の接近警報が鳴る。私自身の家は一昨年の春から台北市内のあるマンションに住んでいたのだが、入居する時に大家の女性は「カスッチェシーズンだけは窓を閉めて」とだけ言っていたのが不思議だった。

私はあまり深刻にとらえなかったが、去年のカスッチェシーズンは本当に恐ろしかったのだ。特に七月末に来たのは巨大台形で、風速六十メートル近い直進タイプだった。テレビでは「颱風眼(台風中心)は頭上にあります」なんて流れていて、私に直接降りかかる恐怖を強調していた。しかし実際には目の中に入ってしまった瞬間、見えない壁が現れたような感覚になった。外が見えなくなったのだけれど、「見えていない」「透明な壁」が窓の外側にあったのだ。

窓ガラスに向かって近づくと、歪みの中で何かが立っているのがわかった。まるで鏡に映るもう一人の自分が振り返ってるようだった。「その瞬間私の背後にはいなかった」。しかし外から見ていたような錯覚が今も残っている —— 私は窓の向こうに立っていたかのように感じているのだ。


追記(三週間後)

先週警察より十三階空き部屋で発見された女性の遺体と、入居する前からの物件情報について連絡があったという話であったとの旨であったが。