コインランドリーの店内

実話です。僕が大学生の頃の話。

東京の郊外、僕が暮らしていた団地の近くには二十四時間営業のコインランドリーがあった。一人暮らしを始めた当初は、毎週のように通い詰めたものだ。洗濯物を回して、店内のテーブル席で課題を書く――そんな日常が、三ヶ月ほど続いたある夜のことだった。

午後十一時頃、僕はいつものように三号機の前でお米を投入していた。その時、店の奥に設置されたミラーボール型の照明が、ふと一瞬だけ点滅したような気がした。気のせいだろうと思って、洗濯ボタンを押そうとしたら、三号機のディスプレイが突然点灯した。

「残り時間:00:00」

投入したばかりなのに。おかしいと思って操作パネルを触ると、機械の中から何かが流れるような、低い音が聞こえた。洗濯槽を覗き込むと、水が渦を巻いていて、何かがぐるぐる回っている。

でも、僕は何も入れていない。

背筋が寒くなった。店の中には僕一人きりだ。別の洗濯機が二台だけ、遠くで音を立てているのが聞こえるだけだ。三号機のガラス面が、ふと鏡のように反射して、店内の姿が映った。

その時、映り込みに気づいた。

三号機の向こう側、店の奥の隅に、誰かが立っていた。

背の高い人物で、顔は暗闇に隠れてよく見えない。ただ、その人物が、ゆっくりと僕の方へ歩いてくるのが、ガラスの反射でわかった。

僕は背中に飛び上がった。振り返ったとき、その場所には誰もいなかった。

でも三号機のディスプレイが、また点灯した。

「残り時間:00:00」

そして今度は、機械の中から、濡れた足音が聞こえたような気がした。

その日以来、僕は三号機を使わなくなった。

店の人にも話したけど、「三号機は古くてね、たまに調子崩すんですよ」と笑って済まされた。

でも、僕は知っている。三号機の中には、もう誰かがいるってことを。