深夜のコインランドリーで回しっぱなしの洗濯機
2026年08月14日
実録。大学の後輩の体験談です。
彼女が大学生の頃、下宿の近くに24時間営業のコインランドリーがあった。下宿に洗濯機がなく、週に2〜3回は通っていた。
「夜中だってことだってあった。1時頃に行って、洗濯物を入れて、待つ間に夜食を買いに行くんだけど」
ある深夜、彼女がランドリーに入ると、奥の隅に一台の洗濯機が回っていた。
中は空だった。
でも水がしっかり入っていて、ドラムが回るたびに泡が立ち、洗濯物のないはずの洗濯機が、明らかに衣類を洗っている音を立てていた。
「……あれ?誰か回しっぱなし?」
店長の姿はどこにもない。カウンターには「館内放送」のマイクが置かれたままだった。
彼女は特に気にせず、自分の洗濯機を使って店を後にした。翌朝、夜食を買いに立ち寄った帰り道、ふとランドリーの前を通りかかった。
まだ洗濯機が回っていた。
朝の8時。電源プラグが抜けていた。
「もしかして、故障してるのかな」
彼女は店員がいる昼間に言おうと思っていた。が、翌日、また夜中に通ると、同じ洗濯機が回っていた。
中身は空。泡立ち、水が回り、洗濯物のない洗濯機が夜中に独りでに回っていた。
「怖くなってきたから、もう行かないことにした」
彼女は大学を卒業し、その地域を離れた。1年後、実家から帰った折りに、ふとあのランドリーの前を通りかかった。
看板が取り払われ、建物は更地になっていた。
「知り合いに聞いたら、あの土地、昔、火事で家族全員が亡くなったアパートだったらしいよ。大家さんが全部壊して駐車場にしたんだけど、その中の一台だけ、壊さなかった洗濯機があったんやて」
「夜中に回ってるの、その洗濯機やで。今でも回ってるらしいよ」
彼女は、その夜、自分の下宿で洗濯物を干しながら、ふと気づいた。
自分の洗濯物の一つが、いつもと違う色の洗濯物と混ざっていたこと。