洗濯機の中のシルエット

夜中二時。残業が明け、家に戻っても洗濯物がなかったので、自宅のすぐ近くにある24時間コインランドリーに行っていた。

私は一人暮らしだ。週に一度、まとめて洗濯を持っていくのが日課だった。機械は全部で十二台。六台が洗濯機、六台が乾燥機。いつも同じ席の機械を使っていたから、どの機械が調子悪いかなど一目でわかる。

その日も、決まった機械にコインを入れてスタートさせた。洗濯物が半分ほどしか入っていないので、短時間コースで回すつもりだった。

洗濯機が水を含み始め、ぐるぐる回り出す。私は隣に座ってスマホを見ていた。

その時だ。

右隣りの機械が、音を立てて動き出した。

私は顔を上げた。誰もいない。入口にも誰もいない。ドアガラスを透過して外を見ると、駐車場の街灯がぼんやりと光っているだけで、人影はなかった。

「誰かが勝手に使ってるのか」

そう思い、私はまたスマホを見た。

十秒後、右隣の機械が停止した。そしてまた、動き出した。

回っている。コインも投入していないのに、洗濯物が水を含んで重たく、ぐるぐる回っている。

私は機械の投入口を見た。コインの穴には、何かが入っている。硬貨のように円形で、白く光っている。

「お金のふりした何かだ」

背筋が凍った。私は立ち上がり、機械のガラス窓に近づいた。

中に入った洗濯物は、私のものではない。白いシャツが一枚、水に濡れて重くなり、回っているたびに窓に押し付けられる。そして、そのシャツが窓に押し付けられるたびに、その形が変化する。

首が伸びて、窓の上部に達する。

腕が横に広がり、左右の端に達する。

足が下へと伸びて、底に達する。

人型の輪郭だ。

水に濡れた白いシャツが、人の形をして回っている。

私は後ずさりした。その時、機械が停止した。

ガラス窓の向こうに、人型のシルエットが、静かに、直立して立っていた。

洗濯が終わったのか、水が抜け、中のものがはっきりと見える。

白いシャツの中央に、どこからか染み込んだような、黒いものが滲んでいた。

形は、目だった。二つの黒い点が、水に溶けそうで溶けなさそうで、ずっと私を見つめている。

私はその場から逃げ出した。

翌日、その機械は使えなくなっていた。店員が「基板が壊れた」と言って、電源を抜いていた。

それ以来、その機械は使われていない。

でも、先週、その機械が回っているのを見た。

夜中ではない。昼間だ。誰もいないのに、右隣の機械が静かに、ぐるぐる回っている。

窓の向こうには、白いシャツが一枚。

その中央に、二つの黒い点が、ずっと私を見つめている。