カメラには映る足元、映らない上半身

実際にあった話です。

大学3年の冬、学費を稼ぐために24時間コンビニの深夜アルバイトを始めた。時間帯は23時から翌7時。客がほとんど来ない深夜は、思ったより暇だった。

店長から言われていた。「深夜は退屈だ。本でも読んでればいいから」

安心感もあった。防犯カメラのモニターは常に見ている。3ヶ月間、事件は一度も起きたことがなかった。

ある日のこと。深夜3時47分。

自動ドアのチャイムが鳴った。僕はいきなり振り返り、入口を見た。

誰もいない。

モニターを確認した。入口のカメラには、確かに誰も映っていない。

しかし、床に水滴が落ちている。入口のマットがびっしょり濡れていた。外は晴れていた。

10分後、またチャイム。同じ場所。誰もいない。ただ、水滴が店内に向かって点在している。まるで、誰かが入ってきたのに、消えたような。

次の日、同じ時間帯のシフト。また起きた。

だが今回は、モニターで気づいたことがある。

入口のカメラが、少しだけ下を向いていた。画面の端に、靴の先が写っていた。水たまりに足がついている。

でも、実際に入口を見ると、何もいない。

モニターと現実。どっちが本当なのか。

その夜、僕は早退した。

次の日の朝、店長が僕を呼んだ。

「昨夜のカメラ、見てくれ」

モニターには、入口の映像。深夜3時47分。自動ドアが開き、入ってくる人がいた。

だけど、カメラには足元だけが映っている。顔も上半身も、一切映っていない。

まるで、カメラには映らない存在が、店に入ってきたような。

店長は言った。「変な故障だな。この映像、見たことないよ」

僕は何も言えなかった。

その足元は、まさに僕が昨夜見たものだったから。濡れたマット。水滴。

でも、その足は、カメラには映らない。

上半身も顔も、何もない。

ただ、水滴だけが、床に落ちている。