24時間コンビニの、映らない客
2026年08月24日
カメラには映る足元、映らない上半身
実際にあった話です。
大学3年の冬、学費を稼ぐために24時間コンビニの深夜アルバイトを始めた。時間帯は23時から翌7時。客がほとんど来ない深夜は、思ったより暇だった。
店長から言われていた。「深夜は退屈だ。本でも読んでればいいから」
安心感もあった。防犯カメラのモニターは常に見ている。3ヶ月間、事件は一度も起きたことがなかった。
ある日のこと。深夜3時47分。
自動ドアのチャイムが鳴った。僕はいきなり振り返り、入口を見た。
誰もいない。
モニターを確認した。入口のカメラには、確かに誰も映っていない。
しかし、床に水滴が落ちている。入口のマットがびっしょり濡れていた。外は晴れていた。
10分後、またチャイム。同じ場所。誰もいない。ただ、水滴が店内に向かって点在している。まるで、誰かが入ってきたのに、消えたような。
次の日、同じ時間帯のシフト。また起きた。
だが今回は、モニターで気づいたことがある。
入口のカメラが、少しだけ下を向いていた。画面の端に、靴の先が写っていた。水たまりに足がついている。
でも、実際に入口を見ると、何もいない。
モニターと現実。どっちが本当なのか。
その夜、僕は早退した。
次の日の朝、店長が僕を呼んだ。
「昨夜のカメラ、見てくれ」
モニターには、入口の映像。深夜3時47分。自動ドアが開き、入ってくる人がいた。
だけど、カメラには足元だけが映っている。顔も上半身も、一切映っていない。
まるで、カメラには映らない存在が、店に入ってきたような。
店長は言った。「変な故障だな。この映像、見たことないよ」
僕は何も言えなかった。
その足元は、まさに僕が昨夜見たものだったから。濡れたマット。水滴。
でも、その足は、カメラには映らない。
上半身も顔も、何もない。
ただ、水滴だけが、床に落ちている。