コンビニのレジモニターに映る客が、店内にいない
2026年09月02日
友人のAは、大学卒業後、東京・世田谷区の住宅街で小型コンビニ「セイコーマート」に正社員として入り、レジ業務を担当していた。
開店二十五時間制の店舗で、深夜二時〜朝八時のシフトに週三回入っていた。
友人は言う。
「最初は些細なことだと思った」
深夜三時頃、いつものようにレジに立っていた。店内の様子は天井隅に設置された四つの監視カメラで確認できる。客が来れば店内のスピーカーから「ただいまいらっしゃいます」という案内が自動で流れる。
その夜、案内が鳴った。
「ただいまいらっしゃいます」
レジ画面のモニターには、店内の映像が四分割されて表示されている。そのうちの一枚に、白いセーターを着た女性が、惣菜コーナーの棚に手を伸ばしている様子が映っていた。
友人は「あ、いらっしゃいませ」と声掛けしようとした瞬間、ふと気づく。
店内に誰もいない。
友人はゆっくりと店内を見渡した。入り口のドアは閉まっている。惣菜コーナーの棚の前には、先ほどまで女性が立っていたはずの場所には、誰もいない。
「あの映像は……」
もう一度モニターを見ると、白いセーターの女性は、今度は飲料品の棚の前で、ペットボトルを手にしている。画面の隅に設置された時計には、実時間の三時四分が映っている。
友人は震える手で店内のインターホンボタンを押した。
「いらっしゃいますか? 大丈夫ですか?」
返事はない。
モニターには、白いセーターの女性が、ゆっくりとレジ方向を向く様子が映っていた。顔ははっきりとは見えないが、目が画面の方向をじっと見つめている。
友人は慌てて店長の携帯電話に電話した。
「店長、店内に……誰かいると思います」
店長は「またか。監視カメラの映像がずれているだけだ」と笑い飛ばした。
その夜から、友人は深夜シフトを降りた。
「でも、その後も店長に言われた」
「映像がずれているわけがない。あの夜、カメラの時刻表示は三時四分だった。でも実際は三時十七分だった」
「つまり、カメラに映っていた時間は、現実に流れていない時間だった」
友人は最後にこうも言った。
「白いセーターの女性は、もう一度モニターに映らなかった」
「でも、その後、店長から聞かされた話がある」
そのコンビニの建物は、かつて診療所だったという。
夜間診療の頃、患者の一人が店内の惣菜コーナーのあった場所で、誰かに襲われた事件が起きていた。
事件の犯人は捕まらなかった。
友人はその後、コンビニ業界を辞めた。
「あの映像が、今も店内に流れているのか」
「それとも、別の場所で」