中古車で知った、前の主人の最期の走行記録
2026年08月14日
知人が中古車を買った話だ。
都内の中古車ディーラーで、走行五万キロの白色ハッチバックを見つけた。年式は古いが外観に目立った傷もなく、価格も納得のいくものだった。車検も残り二ヶ月。知人は「これで通勤が楽になるな」とその場で契約した。
車を受け取って最初の夜、知人はナビの履歴を消すためにダッシュボードに設置されたドライブレコーダーのリセットをした。しかし、リセットボタンが効かない。何度押しても画面は点いたまま、最後の走行記録が再生され始めた。
画面には、夜間の国道の映像が映っていた。道路の両脇には電柱が並び、街灯の明かりが間引かれたような暗さだ。ナビの表示には「残り三分」と出ている。目的地は伏せられていた。
知人はとりあえず映像を止めて、車に乗り込んだ。エンジンがかかった瞬間、ダッシュボードのドライブレコーダーが勝手に起動した。画面には、今まさに走行している道が映し出されていた。
知人は驚いてブレーキを踏んだ。車は止まった。画面には、止まった車の前方に、道路の真ん中に立つ人影が映っていた。白っぽい服を着て、首が不自然な角度で曲がっている。
知人は窓を開けて外を見た。道路には誰もいない。
翌日、知人はディーラーに車を返しに行った。担当者もドライブレコーダーの映像を見て唖然とした。
「この車、実は先週、引取業者から入った物なんです」
担当者によれば、この車は事故で廃車になるはずだったものだった。しかし、事故現場から発見された時には、運転席には誰もいなかった。車のキーは ignition に入ったまま、エンジンがかかった状態だった。ダッシュボードのドライブレコーダーだけが、バッテリー上がりを食い止める形で記録を残していたという。
知人はその車に二度と乗らなかった。
そして、先週、知人は又、夜中に道を走っていた時、ダッシュボードのドライブレコーダーが勝手に起動した。画面には、今まさに走行している道が映し出されていた。
そして、道路の真ん中に、白っぽい服を着た人影が立っていた。