深夜の駐車場と、後部座席に座るシルエット

知人の話だ。彼の名前は田中(仮名)、三十一歳、東京・世田谷のマンションで一人暮らしをしているIT企業員である。

彼が車を所有しているのは知っていたが、その車にドライブレコーダーがついていることは、この話を知るまで私は知らなかった。

事件は先月のことだ。彼は深夜のスーパーマーケットの駐車場に車を停め、店内で買い物をして戻ってきた。いつものようにキーで施錠し、歩道へ戻ろうとした瞬間、ふと車の窓ガラスに自分の姿が映っているのに気づいた。

駐車場は街灯が一つしかない暗い場所だった。

窓ガラスに映る自分の姿は、まるで車内に誰かがいるかのように、後部座席のあたりがわずかに膨らんでいた。田中は「あ、ジャケットでも置いてきたかな」と思い、鍵を開けて中を確認しに行った。

もちろん、車内には誰もいなかった。

「ふぅ、大丈夫だ」と彼は笑って、そのまま帰宅した。

次の日、彼はふとドライブレコーダーの記録を確認しようと思った。昨夜の駐車場の様子が気になったのだ。

再生ボタンを押した瞬間、彼は背筋が凍るのを感じた。

画面には、自分が鍵を施錠して歩道を歩き去る姿が写っている。それは想定内だった。だが、十秒後、車内の後部座席のあたりから、ゆっくりと人の背中のシルエットが現れる。

そのシルエットは、田中が駐車場を離れてから、ゆっくりと運転席へと移動していく様子を映していた。

田中は凍りついた。自分自身で鍵を施錠し、車から離れたことを、彼はよく覚えている。窓も閉まっていた。

だが、画面の中の「誰か」は、後部座席から運転席へと、ゆっくりと、しかし確実に移動していた。

そして最後には、運転席に座った「誰か」が、カメラ――つまりドライブレコーダー――をじっと見つめるカットで、記録は終了していた。

田中は車をもう一度確認した。鍵はかかったままだった。窓も開いていない。しかし、後部座席のクッションが、わずかにへこんでいた。

「誰かが座った跡だ」。

彼は叫び声を上げ、その場から逃げ出したという。その日以来、その車にはもう乗っていないそうだ。


もしあなたが駐車場に車を停める時、鍵を施錠したあと、ふと車の窓に自分の姿が映っているのを見て、何か違和感を覚えたなら。

その違和感は、きっと正しいのだ。