死後のLINE
2026年07月20日
田辺裕一は35歳。前職でIT企業の営業をしていたが、会社倒産のショックから半年間休職中だった。生活保護の手続きもしながら、ひょんなことから「デジタル遺産整理サービス」にアルバイトで採用されることになる。
業務内容は至ってシンプルだ。故人のスマホやパソコンの中身を整理し、不要なデータは廃棄するのが主な仕事。LINEの履歴確認、SNSの解約処理、電子マネーや銀行口座の清算 — どれも事務的で冷たい作業のように思えたが、田辺は「もういいさ」と思った。
しかし3週間目のある日、とあるクライアントからの案件で違和感が始まった。
依頼内容はこうだ。「遺族は一切連絡をしていない」「故人はこの世を去った。死因は交通事故での単独事故であり、親戚もいない」。依頼者の代理人からは「故人のパソコンからLINEのメッセージを削除してほしい」と言われたが、田辺は「死亡確認書類」の有無を確認しようとした際、奇妙な点に気づいた — 死亡日が3日前と記入されていたのだ。
「3日?」と田辺は思わず呟いてしまった。代理人はにっこりと笑い、「いや実は…」「いえ構いません」と田辺はすぐに切り上げたものの、胸のどっかから何かが突き刺さる感覚を覚えていた。
事務所に戻ったとき、田辺はこの案件を担当することになる — 死因も遺族の情報も一切不明だ。田辺はまず故人のパソコンを起動しようとした。すると起動音と一緒に、デスクトップに一つだけショートカットが表示された。「私への手紙」 と名付けられたテキストファイルだった。
田辺はそのファイルをダブルクリックした瞬間、画面には次のような一文が現れたのだ。
「死んでも終わらないことがある」と。 「それはねえ…… 誰かが私を見てる と感じることなのよ。」
田辺は一気に首筋に冷えを感じた — そして気づいた。このテキストファイルの最後に更新日時が表示された日の横には、死亡日と同じ「3日前」 が記されていたのだ。
つまり — 死んだはずの人が、その3日後にファイルを編集した。
田辺は震る手を止めることができず、次の瞬間、ファイルの内容が勝手に変更されて「次は君の番だよ」と書かれたのを見た時、すでに田辺自身の手元にそのテキストがあったという事実に気づいた。つまりそれは田辺の手で開かれていなかったのだ。田辺のスマホもまたLINEを開いていたはずなのに、画面には何かが見えない形で操作されたような痕跡が残っていた。
田辺は必死に代理人への連絡を試みた — しかし、既にメールアドレスは死亡者の本人宛になっていた のに 田辺の名前が送られていて、田辺と全く同じ内容が記録されていること — つまり 田辺自身も「死んだ人」として扱われていた という事実に気づいた。
しかしもっと恐ろしい発見があった。田辺のLINEアカウントに「送信者の名前帳」から削除されていない連絡先が一つ残っていたのだ。それは — 本人名義にはなってなく、しかし 同じ電話番号 の相手だった。つまり田辺自身の手元で「受信者の名前帳」として認識されつつ、一方では田辺の個人LINEとして使役されているという矛盾が生まれていたのだ。
田辺は思わず叫んだ。「何で!? 死んだ人は私じゃあないのに!」と。しかしその瞬間、スマホのLINE通知が一斉に鳴響いた — 全て同じ電話番号からのメッセージ が延々と届いていたのである。中には「あなたはもう見ているでしょう?次は君だ」「田辺裕一へ お疲れ様です」などの一文が次々に入ってきて、田辺自身の手元で送信履歴が更新されていることを確認したのだ。
しかしその時になって思い出す — 田辺もまた、死亡者から「誰かに操作された」という報告をどこかで聞いていた はずだ。つまり田辺自身もまた、すでに何者かに扱われている存在になっていたのだと気づいた。既に田辺の名前帳から消されていない相手のLINE — それは田辺の手元にはなかったはずの連絡先であり、田辺自体が 死んでいた という情報をどこかから得てしまったのだから — その事実だけが田辺を追い詰めていくことになるのだ。
しかしもっと恐ろしい瞬間があった。「お疲れ様でした」という一文が突然表示されたのだ — 田辺自身の手元でもなく、LINEの受信トレイの一番下に表示されるのは 死んだはずの人の電話番号 からだった。つまり田辺は既に「受信者の名前帳にない」という情報を持っているにもかかわらず、その番号が田辺の手元で使役されていることに気づく 瞬間があったのだ。
そしてつい先日ある日。田辺裕一のスマホから届いたLINE通知に、 同じ電話番号から 「お疲れ様でした。次はあなたの番です。」と一言だけ添えられていた。しかしその番号を田辺が見ている間に、田辺自身の手で送信者アドレス帳に追記されていたのだ — つまり田辺自身もまた、既に「死んだ人」の手元に操作されているはずだという事実 に気づく瞬間があったのである。
田辺は震える手でスマホの電源を切ることも、LINEを見続けることもできず、結局朝まで机の前に居座った。起きたらまず確認した — 田辺の手元には死亡者のデータが一切残っていない。全て 別の電話番号 によって記録されており、その「記録」こそが田辺自身に操作されているはずの痕跡だったのだ。
そして最後に、死んだ人のLINEから田辺自身へのメッセージが一つだけ残っていて、それは — 「また会いましょう」 という一言だった。田辺は既に気づいていた。 この世を去った人を追わないで と、田辺の手元にはなかったはずの名前帳に記録されることを避けるように — しかし、すでにその「死」の連鎖はそのメッセージによって確定していたのだと。
そして最後に。
パソコンのカメラランプが点灯した瞬間 — それは単なる誤作動だったのか、それとも田辺自身がまだ 誰かに見られている 証拠だったのか、それはもう田辺には判断ができなかった。
しかし一つのだけ確かなことがある。
田辺が今ここでこの文章を読んでいる時、 死んだはずの人のLINEアカウントから「お疲れ様でした」というメッセージが自動送信されるプロセスが走っている ということだ — そしてそれは、 田辺自身の手元ではなく、「死者」の手先によって実行されている と信じるしかないのだった。
💀 おしまい 💀
Written by GitHub Copilot (Claude Opus 4)