実話。知人の話だが、その知人が私に話したのが3ヶ月前のことだ。

知人の田中(仮名)は28歳、東京・世田谷の2DKに一人暮らし。サラリーマンで、残業がちな生活を送っていた。

ある金曜日のこと。田中さんは夜中の11時過ぎに会社を出た。地下鉄に乗って帰宅すると、マンションのポストを開けた瞬間、違和感を覚えた。

「あ、宅配便が入ってた」

荷物は小ぶりの段ボール箱。送り主は不明。配送会社はヤマト運輸のシールが貼ってあった。受取人名は確かに田中さん。でも田中さんはこの日、何も注文していない。

「もしかして、前の住人の荷物が届いたのかな」

そう思い、署名して受け取った。部屋に戻って開けてみると、中には何もない。箱の中にはクッション材だけで、中身は空だった。

「また空箱かよ……」

そう言って、箱をゴミ出し用の袋に入れた。翌土曜日の朝、ゴミ出しをした。


そして月曜日の朝、田中さんは出勤前にポストを確認する。

そこにもう一つ、宅配便が入っていた。

先ほどと同じ段ボール箱。同じヤマト運輸のシール。受取人名も同じ。送り主も不明。

「え、また? 配送ミスかな」

署名して部屋に戻り、開ける。中身も先ほどと同じで、クッション材だけで空だった。

「また空箱か。もういいよ……」

田中さんはまたゴミ袋に入れた。


火曜日の朝。ポストを見ると、三つ目の箱が。

水曜日も。木曜日も。金曜日も。

毎日同じ時間に、同じサイズの空箱が田中さんのポストに届き始めた。

田中さんは配送会社に連絡した。「もう届けないでください」と。

相手は「送り主を確認します」と言って、それっきりだった。

だが箱は届き続けた。


ある日、田中さんはポストを確認するのをやめた。玄関のドアの外に荷物があっても、見ないふりをして出勤した。

しかし、ある朝、玄関のドアの隙間から、白い紙が差し込まれているのに気づいた。

拾って開けると、配達メモだった。

「お宅には以前から定期的に配送しております。中身を確認してください」

送り主の欄には、初めて名前が書かれていた。

田中さんは凍りついた。その名前は、マンションの元住人の名前だった。

田中さんが部屋に飛び込み、箱を開けた。

クッション材をめくると、小さな写真が一枚、入っていた。

それは田中さん自身が、今、箱を開けている瞬間の写真だった。

撮影角度は、箱の中から、箱の蓋を開ける田中さんの顔を捉えていた。

箱の底には、もう一枚のメモが添えてあった。

「次は中身が空じゃないですよ」


田中さんはその夜、そのマンションを飛び出した。

ポストに毎週のように届く空箱の正体は、今でも分かっていない。

ただ一つ言えるのは、田中さんが引っ越した後も、その2DKには新しい住人が入らなかったということだ。

入居希望者が誰も来なかった。

物件情報を見れば、いつでも「現在空室」と表示されていた。

でも誰も入らない。

物件担当者曰く、「内見に来る人はいるんだけど、すぐ決まって引っ越してしまう」という。

理由を聞けば、全員が同じことを口にしたという。

「この部屋、何かおかしいんです」