深夜の宅配便が24時間後に届いた
2026年08月19日
実話。知人の話だが、その知人が私に話したのが3ヶ月前のことだ。
知人の田中(仮名)は28歳、東京・世田谷の2DKに一人暮らし。サラリーマンで、残業がちな生活を送っていた。
ある金曜日のこと。田中さんは夜中の11時過ぎに会社を出た。地下鉄に乗って帰宅すると、マンションのポストを開けた瞬間、違和感を覚えた。
「あ、宅配便が入ってた」
荷物は小ぶりの段ボール箱。送り主は不明。配送会社はヤマト運輸のシールが貼ってあった。受取人名は確かに田中さん。でも田中さんはこの日、何も注文していない。
「もしかして、前の住人の荷物が届いたのかな」
そう思い、署名して受け取った。部屋に戻って開けてみると、中には何もない。箱の中にはクッション材だけで、中身は空だった。
「また空箱かよ……」
そう言って、箱をゴミ出し用の袋に入れた。翌土曜日の朝、ゴミ出しをした。
そして月曜日の朝、田中さんは出勤前にポストを確認する。
そこにもう一つ、宅配便が入っていた。
先ほどと同じ段ボール箱。同じヤマト運輸のシール。受取人名も同じ。送り主も不明。
「え、また? 配送ミスかな」
署名して部屋に戻り、開ける。中身も先ほどと同じで、クッション材だけで空だった。
「また空箱か。もういいよ……」
田中さんはまたゴミ袋に入れた。
火曜日の朝。ポストを見ると、三つ目の箱が。
水曜日も。木曜日も。金曜日も。
毎日同じ時間に、同じサイズの空箱が田中さんのポストに届き始めた。
田中さんは配送会社に連絡した。「もう届けないでください」と。
相手は「送り主を確認します」と言って、それっきりだった。
だが箱は届き続けた。
ある日、田中さんはポストを確認するのをやめた。玄関のドアの外に荷物があっても、見ないふりをして出勤した。
しかし、ある朝、玄関のドアの隙間から、白い紙が差し込まれているのに気づいた。
拾って開けると、配達メモだった。
「お宅には以前から定期的に配送しております。中身を確認してください」
送り主の欄には、初めて名前が書かれていた。
田中さんは凍りついた。その名前は、マンションの元住人の名前だった。
田中さんが部屋に飛び込み、箱を開けた。
クッション材をめくると、小さな写真が一枚、入っていた。
それは田中さん自身が、今、箱を開けている瞬間の写真だった。
撮影角度は、箱の中から、箱の蓋を開ける田中さんの顔を捉えていた。
箱の底には、もう一枚のメモが添えてあった。
「次は中身が空じゃないですよ」
田中さんはその夜、そのマンションを飛び出した。
ポストに毎週のように届く空箱の正体は、今でも分かっていない。
ただ一つ言えるのは、田中さんが引っ越した後も、その2DKには新しい住人が入らなかったということだ。
入居希望者が誰も来なかった。
物件情報を見れば、いつでも「現在空室」と表示されていた。
でも誰も入らない。
物件担当者曰く、「内見に来る人はいるんだけど、すぐ決まって引っ越してしまう」という。
理由を聞けば、全員が同じことを口にしたという。
「この部屋、何かおかしいんです」