実話。僕の友人・Kの話。

Kは東京・世田谷の2階住み。一人暮らし歴三年目。

Kの部屋の玄関には、標準的な宅配ボックスが備え付けられている。大きさは縦40cm、横30cmほどの箱で、ドアに番号錠がついている。Amazonやネットスーパーの配達に頻繁に使っていた。

ある日、Kは深夜二時半頃に起きた。

理由はない。ただ、ふと目が覚めた。

寝室からリビングへ歩くと、玄関のあたりに何かが響いている。

ピッ、ピッ、ピッ——

宅配ボックスのチャイム。

Kは立ち止まった。

「……配送? こんな時間に」

スマホを確認する。配達アプリの通知もない。

チャイムは三回鳴って止んだ。

次の瞬間、宅配ボックスのドアが、カチリ、と軽く開いた音。

Kは息を止めた。

ドアは半分ほど開き、また閉まった。

カチッ。

チャイムがもう一度鳴った。

「誰だ……」

Kは玄関へ歩み寄る。足音が自分以外に混じっている気がした。

ドアを開ける。

宅配ボックスのドアは、さっきと同じように半分ほど開いている。

中は空だった。

Amazonの配達でもないし、ネットスーパーでもない。

ただ、箱の底に、一枚の紙が置かれていた。

Kが紙を拾う。

手書きのメモ。字は汚くて、でも読める。

「もう入りました」

Kは振り返った。

背後には誰もいない。

Kは紙を箱の中に捨て、ドアを閉めた。

その夜、Kは眠れなかった。

しかし、その後もチャイムは鳴り続けた。

毎晩、二時半頃。

ピッ、ピッ、ピッ——

三回鳴って、ドアが開き、閉まる。

Kは毎回確認する。

箱の中はいつも空。

しかし、四日目のある朝、Kは帰宅すると、玄関の宅配ボックスのドアが開いたままになっていた。

中を覗き込む。

箱の底に、先ほどのメモがもう一枚、置かれていた。

「二回目」

Kは叫んだ。

スマホでカメラを撮ろうとした瞬間、チャイムが鳴った。

ピッ、ピッ、ピッ——

ドアが開く。

Kはスマホを箱の中に突っ込んだ。

画面に映ったのは、宅配ボックスの内部。

狭い箱の中で、スマホの画面が暗転する。

その直後、箱の中から、自分の声に似た声が聞こえた。

「三回目」

Kはそれ以来、そのマンションを退去した。

新しい部屋には、宅配ボックスがない。

でも、たまに夜中に、チャイムの音がする。

もちろん、Kの部屋には宅配ボックスはない。

Kは思う。

「もしかして、箱の中に入ってしまったのは、僕の方かもしれない」