宅配ロッカー

これは、友人のKが実際に体験した話だ。

Kは地方都市の郊外、人口三万人ほどの町に住んでいる。田舎なので、宅配ロッカーは町内に一つしかなかった。町役場の前の広場に、四角いコンテナのようなものが設置してある。二十ほどの扉があり、それぞれの扉に番号が振ってある。

Kの家の番号は「17番」。

去年の冬、Kはよくオンラインショッピングをするようになった。その頃、町の人は「宅配ロッカーがあるなら便利だ」と、こぞって利用し始めた。

最初は順調だった。Kが荷物を頼むと、ロッカーの扉に番号が割り振られ、SMSで通知が来る。Kは仕事から帰って、その番号の扉を開けて荷物を取り出す。

ある日のことだ。Kは夜中の十一時頃、スマホに通知がきた。

「【〇〇宅配】17番のロッカーに荷物をお届けしました。」

Kは「え、また17番か」と思った。いつも17番なので、気にしていなかった。17番はKの家の番号と同じだからだ。

「まあ、便利だからいいか」と、Kは寝た。

次の日、Kは仕事から帰ってロッカーを確認した。17番の扉を開けると、中には何もなかった。

「また空か」とKは思った。以前にも何度か、荷物が入っていない扉があった。でも、SMSには「お届けしました」と出ている。Kは「システムのエッチャかな」と思い、運営に電話した。

「17番のロッカーに荷物がありません。確認してください」

「はい、確認いたしました。17番にはお届け済みとなっております。ご利用者様の誤操作かもしれません」

「でも、中に入っていないってば」

「はい、お手数ですが再度ご確認ください」

Kは再度確認した。空だった。

それから数日後、また夜中に通知がきた。

「【〇〇宅配】17番のロッカーに荷物をお届けしました。」

Kはスマホでロッカーのカメラの映像を見た。町役場の前の広場に設置されたロッカーのライブ映像だ。夜は暗く、白く照らされたロッカーに、誰もいない。

Kは「またか」と思い、寝た。

次の日、Kはまた確認に行った。空だった。

でも、Kは何かおかしいことに気づいた。

17番の扉のガラス面が、他の扉と違って、少し曇っているのだ。他の扉はクリアなガラスだが、17番だけ、内側から白く曇っている。

Kはガラスを拭いた。すぐにもとに戻った。

一週間後、Kは夜中にまた通知で起きた。

「【〇〇宅配】17番のロッカーに荷物をお届けしました。」

この日だけ、Kは起きてロッカーに行った。夜中の十二時、町役場の前の広場。真っ暗だ。白い照明に照らされたロッカーだけが浮かんでいる。

Kは17番の扉を開けた。

中には、小さな箱が入っていた。Kはそれを持ち帰った。

家であけてみると、中には古い写真が入っていた。Kの写真だった。

Kが子供の頃、実家で撮った写真だ。実家は二十年前に引っ越した。

写真の裏に、黒いボールペンでこう書いてあった。

「もう届けたから」

Kはそれ以来、17番のロッカーに荷物が届くことはなくなった。

でも、Kは時々、夜中にSMSがくることがある。

「【〇〇宅配】17番のロッカーに荷物をお届けしました。」

でも、Kが朝確認に行っても、中はいつも空だ。

でも、Kは知っている。17番の扉は、もう二度と開かないだろうと。

なぜなら、その扉はもう、外から開けられないからだ。

内側から鍵がかかっている。