24時間ドラッグストアの監視モニターに、閉店後の客が映った
2026年08月21日
僕がそのバイトを始めたのは、去年の四月だった。
大学の近くにある24時間営業のドラッグストア。時給は都内並みだが、何より夜型人間の僕にはピッタリだった。夜勤は週三回。深夜2時から朝6時まで、一人でお店を任される。
最初は退屈だった。品出し、棚整理、レジの現金確認。何も起こらない。深夜のコンビニで起きるような「幽霊が現れる」なんて、小説の中でしか見たことないと思っていた。
でも、ある夜、起きた。
それは九月のある火曜日だった。深夜3時47分。僕は店長の机にある古いCRTモニターの前に座って、監視カメラの映像を見ていた。4分割された画面には、店の四方と駐車場、入り口の5カ所が映っている。
入り口のカメラに、動きがあった。
店内は真っ暗で、自動ドアは閉まっている。なのに、駐車場のカメラと入り口のカメラの境目あたりに、人の影が立っている。
「……誰か?」
僕はモニターの前に立ち、自動ドアのインターホンを押した。
「いらっしゃいませ。閉店しております」
返事はない。影はそのまま、自動ドアの前に立ったまま動かない。
僕はいったんカウンターに戻り、もう一度モニターを見た。
影はいない。
「ふーん。猫か、何かだな」
そう思い、またモニターを見直した。すると今度は、入り口のカメラの画面の中で、影がゆっくりと店内に入っていくのが見えた。
自動ドアは閉まったままなのに。
僕は背筋が凍るのを感じた。インターホンもう一度押した。
「もしもし? いらっしゃいますか?」
返事はない。モニターには、店内のカメラに、黒い影がゆっくりと店内を歩いている様子が映っていた。
僕は震える手で店長に電話をかけた。
「店長、店内に……入ってくる人がいるかもしれません」
「はあ? 今閉店してるじゃん。大丈夫、鍵かけてあるから」
「でも、モニターに——」
「あ、それ。カメラのバグだよ。夜中になるとよく映る。気にすんな」
そう言われて、僕はモニターを見直した。確かに、画面の端にノイズが走っている。
「……そうか。バグだったんだ」
そう思い、僕はモニターから目を離した。
5分後、またモニターを見直した。
店内のカメラには、影がカウンターの前で立っていた。
僕が立ち上がって店内を見渡した。真っ暗で、何も見えない。
「……誰かいる?」
返事はない。
僕がモニターを見直すと、影は入り口のカメラの方へ向かって歩いていった。そして、自動ドアの前に立った瞬間、画面がノイズで埋め尽くされ、影は消えた。
その夜から、僕は監視モニターを見なくなった。
その後も、何度か同じようなことがあった。モニターに人影が映る。でも、実際に見ても誰もいない。
店長は「カメラのバグだ」と言い張る。でも、僕は知ってる。
バグが、人の形をして、店内を歩くことはないって。
今でも夜勤に行くと、モニターが気になって仕方がない。
映っているのか、映っていないのか。
映っているとしたら、今、誰が映っているのか。