監視モニター

僕がそのバイトを始めたのは、去年の四月だった。

大学の近くにある24時間営業のドラッグストア。時給は都内並みだが、何より夜型人間の僕にはピッタリだった。夜勤は週三回。深夜2時から朝6時まで、一人でお店を任される。

最初は退屈だった。品出し、棚整理、レジの現金確認。何も起こらない。深夜のコンビニで起きるような「幽霊が現れる」なんて、小説の中でしか見たことないと思っていた。

でも、ある夜、起きた。

それは九月のある火曜日だった。深夜3時47分。僕は店長の机にある古いCRTモニターの前に座って、監視カメラの映像を見ていた。4分割された画面には、店の四方と駐車場、入り口の5カ所が映っている。

入り口のカメラに、動きがあった。

店内は真っ暗で、自動ドアは閉まっている。なのに、駐車場のカメラと入り口のカメラの境目あたりに、人の影が立っている。

「……誰か?」

僕はモニターの前に立ち、自動ドアのインターホンを押した。

「いらっしゃいませ。閉店しております」

返事はない。影はそのまま、自動ドアの前に立ったまま動かない。

僕はいったんカウンターに戻り、もう一度モニターを見た。

影はいない。

「ふーん。猫か、何かだな」

そう思い、またモニターを見直した。すると今度は、入り口のカメラの画面の中で、影がゆっくりと店内に入っていくのが見えた。

自動ドアは閉まったままなのに。

僕は背筋が凍るのを感じた。インターホンもう一度押した。

「もしもし? いらっしゃいますか?」

返事はない。モニターには、店内のカメラに、黒い影がゆっくりと店内を歩いている様子が映っていた。

僕は震える手で店長に電話をかけた。

「店長、店内に……入ってくる人がいるかもしれません」

「はあ? 今閉店してるじゃん。大丈夫、鍵かけてあるから」

「でも、モニターに——」

「あ、それ。カメラのバグだよ。夜中になるとよく映る。気にすんな」

そう言われて、僕はモニターを見直した。確かに、画面の端にノイズが走っている。

「……そうか。バグだったんだ」

そう思い、僕はモニターから目を離した。

5分後、またモニターを見直した。

店内のカメラには、影がカウンターの前で立っていた。

僕が立ち上がって店内を見渡した。真っ暗で、何も見えない。

「……誰かいる?」

返事はない。

僕がモニターを見直すと、影は入り口のカメラの方へ向かって歩いていった。そして、自動ドアの前に立った瞬間、画面がノイズで埋め尽くされ、影は消えた。

その夜から、僕は監視モニターを見なくなった。

その後も、何度か同じようなことがあった。モニターに人影が映る。でも、実際に見ても誰もいない。

店長は「カメラのバグだ」と言い張る。でも、僕は知ってる。

バグが、人の形をして、店内を歩くことはないって。

今でも夜勤に行くと、モニターが気になって仕方がない。

映っているのか、映っていないのか。

映っているとしたら、今、誰が映っているのか。