深夜のエレベーター

実は、これ僕のことなんです。

都内某所のオフィスビルで、月曜の深夜残業。午後十一時四十分過ぎ。 エレベーターホールは静かで、壁の電光掲示板だけがチカチカ点滅していた。

「あー、帰ろう」

ボタンを押す。地下二階の駐車場へ。 扉が閉まり、エレベーターが動き出す。

その時だった。

「ピッ」

自分の階以外のボタンが、勝手に点灯し始めた。 10階、8階、5階……地下二階より上の階が、次々と光り出す。

「なんでやねん」

笑ってたら、エレベーターが止まった。 扉が開く。廊下は真っ暗で、非常灯の緑色だけがうっすらと照らしている。

誰もいない。

「……ふーん」

エレベーターに戻ろうとした瞬間、足音が聞こえた。 廊下の奥から、ゆっくりと近づいてくる足音。

僕はエレベーターのボタンを連打した。 扉が閉まり、地下二階へ下り始めた。

モニターを確認すると、表示は「B2」。 でも、その横に、小さく赤く、「13」という数字が光っていた。

そのビルには、十三階なんてない。

次の日、同僚に話したら、「えっ、十三階ってあるの?」と言われた。 ビル管理の人に聞いたら、「十三階はないですよ」と。

でも、その夜、またエレベーターに乗った時、モニターにははっきりと「13」と表示されていた。

そして先週火曜日。 深夜の残業が終わって、エレベーターに乗った時、全てのボタンが点灯した。 一階から地下二階まで、全部の階のボタンが、赤く光り続けていた。

扉が開いた瞬間、中から冷たい風が吹き出した。 廊下には、誰もいなかった。

でも、床に濡れた足跡が、エレベーターから廊下の奥へと続いていた。

その足跡、僕の靴のサイズと全く同じだった。