実録: 32階の窓に映る影
2026年09月01日
32階に住んでいる知人の話です。
都内某所のタワーマンションに単身で引っ越してきて、最初の月は特に問題なかった。眺望が良く、静かで、満足していた。
問題が始まったのは2週間目のことです。
深夜2時頃、ふと目が覚めると、窓の外から「コン、コン」という音が聞こえた。木製の本を机に置くような、鈍い音です。
「猫でもいるかな」と思い、カーテンをめくって外を見た。32階だ。地面からは約100メートル。手すりもない。バルコニーもない。
何もいない。
翌日も同じ時間。また「コン、コン」。今度は少し強めで。
3日目は「コンコンコン」というリズムで、まるで誰かがドアをノックしているようだった。
「防犯カメラをチェックしよう」と、マンションの管理アプリを開いた。エントランスのカメラは問題ない。エレベーターのカメラも正常。
だが、ふと気づいた。窓の外側に防犯カメラが一つ設置されているのだ。管理用のカメラで、通常は建物の外観を監視している。
そのカメラのログを確認すると、過去3日間の深夜2時に、窓の外側に人影が写っていた。
32階の窓の外に。
知人はすぐに管理会社に連絡した。すると「カメラのログには何も写っていません」との回答。
「では、あの音は?」
「窓ガラスの熱膨張です。夜間に温度が下がると、そういう音が出ます」
その説明で納得した。おそらくそうだろうと思った。
だが、その夜も「コン、コン」。
知人は窓に近づき、カーテンの隙間から外を見た。
ガラスには、月の光が反射して、部屋の様子がうっすらと映っている。その反射の中に、知人自身の姿が写っている。
そして、その横に、もう一人の影が写っていた。
知人は一人暮らしだ。部屋には誰もいない。
反射の中の影は、窓の外側から、知人の背後に立っている。手のひらがガラスに密着している。
知人はその場で凍りついた。
そしてふと気づいた。
窓ガラスの反射に写っている「自分」は、カーテンを覗き込んでいる。
でも、自分は今、ベッドに立っている。
反射の中の「自分」が、ゆっくりと首をかしげた。
その瞬間、窓の外から「コン」という音がした。
ガラスに、手のひらの形が、くっきりと残っていた。
知人はその夜、逃げ出した。
その後の消息は、知人自身も語らない。
ただ、引っ越した後、新しい家の窓にも「コン、コン」という音が聞こえるようになった、と最後に漏らした言葉だった。
あなたの住んでいるマンションも、窓の外側から何かを見られていないか、確認してみたらどうだろう。