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東京・世田谷の中古マンションに一人暮らしを始めて3ヶ月目に入った。オートロック、24時間管理のセキュリティ付き。引越した理由も、深夜の帰宅が多い仕事柄、安全性を重視したからだった。

ある水曜日のこと。午後2時過ぎに起きた。翌日からの出張準備で遅くまでパソコンを触っていたせいで、気づけば朝の7時を回していた。

でも、その時はまだ朝だと思っていた。

インターホンのベルが鳴っていた。

モニタ画面を見ると、廊下に女性が立っている。黒いコートを着て、顔はモニタの解像度のせいかぼやけているが、カメラをじっと見つめている。

「誰ですか?」

返事がない。モニタの女性は動かない。ただ見つめているだけ。

「宅配ですか?それとも…”

また沈黙。

仕方なくドアのチェーンを外して、ペッパホールから外を見た。

廊下は空だった。

電灯は点いている。消し忘れもない。でも、誰もいない。

モニタを見直すと、女性の姿は消えていた。画面には「接続終了」の文字。

「もしかして、間違った階か?」

そう思い、管理会社に電話した。翌朝のことだったので、対応も穏やかだった。

「昨夜、ご入居者様からの連絡はありませんでしたよ」

そう言われて、少し安心した。ただの勘違いだろう。


その翌日、またインターホンが鳴った。

今度は午後11時。モニタ画面には、またあの女性がいた。

今度は closer で、顔がはっきりと見える。白くて、何も表情のない顔。口が開いている。開いたまま、ずっと。

「誰ですか!?」

また沈黙。

ドアを開けて確認した。廊下は空。

でも、床に水滴が一滴、落ちていた。濡れた靴の痕。

管理会社に再度連絡。今度は不安が募ってきた。

「昨夜のインターホン履歴を確認しますね…あ、ご入居者様の階には記録がありません」

「つまり、誰も来なかったってことですよね?」

「ええ、記録上は。」


3日目。

午後2時。またインターホンが鳴った。

モニタ画面を見ると、廊下には誰もいなかった。

でも、画面の隅に、何かが写っていた。

ドアの隙間から、覗いている目。

部屋の中。

私はゆっくりと振り返った。

部屋には誰もいない。

モニタ画面を見たら、カメラはインターホン本体を向いていた。

インターホン本体の画面に映っていたのは、私の背後に立つ女性の顔だった。

私は振り返った。

誰もいない。

でも、インターホンの画面には、女性が微笑んでいるのが映っていた。

その夜から、インターホンは鳴らなくなった。

でも、毎日朝になると、玄関の床に水滴が一滴、落ちている。

管理会社に相談したところ、

「おそらく、上の階の配管からの漏水ですよ」

そう言われた。

でも、上の階には誰も住んでいない。

空室だ。

でも、毎日、水滴が落ちている。

そして、先週のこと。

インターホンが鳴った。

モニタ画面を見ると、廊下には誰もいなかった。

でも、インターホンの画面に、私の顔が映っていた。

今、この瞬間の私の顔が。

そして、画面の隅に、小さな文字が浮かんでいた。

「見つかった」