アンデスの高原の道、夜中の1時を回った頃には人もいなかった。

リオス兄弟がトラックで運んでいたのは鉱山の労働者たちだった。標高4,500メートルの薄暗い道を、エンジン音だけが響く中を進むこと2時間、最後の峠の手前でフロントタイヤにバーストが起きた。

「この先10キロは集落がない」と運転手のアントニオが言った。「誰か助けに来てもらう必要があるさ」

2人に限って夜間に一人立ち去るよう提案した。理由は、彼らの家族を案じてのものだった──しかしアンデスの土地には、旅人の善意すら見抜く何かがあるのかもしれなかった。

ガブリエルがヘルメットをかぶり、ヘッドライトを前に掲げて闇の中へ歩み出した。

最初の一キロは問題なかった。凍った風が頬を撫でるだけですむ道だ。2つめの峠を超えた時、彼の足が勝手に止まった。

向こうの岩棚に一人の女性が座っていた。

白っぽいドレス。濡れていない布地に、水滴が光っているようだった。女性は足を川の中へ伸ばしており──それは水の流れではなく、彼女自身が水の流れそのもののように見えた。下の方が見えない。

ガブリエルは背筋に冷たさが走った。鉱山市で誰でも知っている名前を思い出した。「ラ・コラーダ・ママ」──洗う女。河原の岩の上で、決して止まらない洗濯をしている老婆。誰かが通りかかると足を伸ばし、足に濡れ衣をかければ……

「あの女性は」ガブリエルが自分自身に問いかけた瞬間ですら、もう遅かった。

彼女は立ち上がった。

背高さは人のそれではなく、川面の向こう側から伸びてくる何かのようだった。白いドレスは水滴となって霧状になり、彼女自身の輪郭は水蒸気として空中に漂う。しかし顔だけははっきりしていた。笑んでいる。古びた老婆の笑顔で。

ガブリエルは駆け出した。しかし雪と氷の上での暴走で、すぐに滑って転倒した。

顔を地面につけるその瞬間、彼の左足首を冷たいものが掴んだ。

「……お前の足も、もう濡れるだろう」

水声が頭の中で響いた。ガブリエルは叫びながら振りほどいたが、左手の指先から水が漏れ出し、彼のブーツの中まで濡れていく感触を得た。

トラックに戻った時、彼は自分の左足だけ異常に冷たいことに気づいた。アントニオも気づいていなかっただろう。夜は深まるばかりで、川の向こうでは洗濯音が絶え間なく聞こえる気がした──それはガブリエルの右耳だけで聞ける音だった。

朝、ガブリエールがベッドから起き上がろうとした時、シーツの一部は完全に濡れていた。冷えているのは枕の半分だけだ。

彼は誰も話さなかった。

しかしその晩以来、彼は毎晩枕元を拭かなくても乾かないことに気づいている。真夜中に目を覚ます度……それは自分の足元に水が溜まっているのを感じるのだ。川底から。