La Dame Blanche du Phare

ブルターニュの嵐の中で、黒岩の上に立つ灯台と現れる白夫人

この物語はブルターンヌ地方に代々語り継がれてきた伝承である。灯台守の娘が嵐で姿を消し、それから二十年も灯籠には「白夫人」の名が刻まれた。

──朝明けの空気に混じる塩分とアザラシの吐息。フィニステールの岩岸に立つ『ラ・テュール・ド・コルネヴィアン』灯台は、夜間になるとただ一つの光となる。その光は漁船を誘い込みながら同時に、別の何者かを呼び寄せると言われているのだ。

初老の灯台守ルイは毎晩、灯籠を回す前に灯器室の壁を点検するようにしていた。
刻まれた名簿だ。
「マリー=アネット・ド・コルベック」──最初に彫られた名前である。この名の女は七十年前に嵐により灯台の上から身を投げたとされる伝承に起因するもので、彼女の亡骸は潮に流され見つからなかったと記録にある。

しかし、それから数十年にわたり、「白夫人が現れる」という怪異はこの灯台で繰り返された。
次の日に消える者がいる。
名前を書かれ、夜中に目覚めると壁に自分の名が鉛筆の字で記されている。その者は翌朝になると、どこかから戻らない。

ルイはその痕跡を調べ始めようとしたある朝、灯器室の床に湿った手形の跡を見て凍りついた。指紋ではなく、貝殻のような模様が床一面に残っていたのだ。
それは潮風が作る砂の結晶だった。
壁から滴る水も、海水の成分分析結果と同じミネラル含有率を記録した。灯器室の窓は閉め切られており、外と接するのは地下からの湧き水しかない──つまり何か体が直接触れた痕であるとしか考えられない。

次の夜、ルイが灯籠のスイッチを入れた瞬間、視界の中に白く透けそうな女性が立った。
彼女の服は湿っており、髪から落ちる水滴だけが明かりによって虹色に光っていた。顔を上げようとした瞬間——目が合わなかった──その人物は消え、灯りは暗転した。

次の日に海で男性の遺体が発見された。

ルイはその翌朝だけ灯器室で待つことを選んだ。
深夜零時を回った直後、壁の石が震え始め、水滴が噴出し始めた。壁の中から白く柔らかな腕が出現し、壁面に触れた指の先から白い線が現れていく──それは灯籠に刻まれた文字のように見えた。

壁は液体のような状態になったかと思ったら、また元に戻る。そのたびに灯りは明滅を続けた。
ルイはこの光景を「灯台の壁に住む女」と呼んだ。

それから数年後のある朝、漁師たちがコルネヴィアン岩島に近づいたとき、潮風が止んでいたにもかかわらず波は静かだったと報告している。「海に何か息が潜んでいる」とも語った。
その日はルイの消えた日——翌日のニュースで「失踪者の遺体は確認されていない」と報じられた。


灯器室に残された手記の断片

──私は灯籠を回しているうちに自分の指が白くなるのを見た
光に透かすのは潮ではなく、何か体内から滲み出してきた液体だった
朝起きると壁に名前がある──私は既にその一人になっているのだ
灯台の外は海ではない。私の外は海ではないのか?

もう戻れないだろう
灯籠を点けることはできない
それはこの場所で唯一できることだ

現代の記録

2018年に地元新聞が「ル・フェロ・ド・コルネヴィアンの怪異」について調査したところ、現役灯台守(当時)による口承では次のように語られたという。
「壁に水滴が滲むことがある」「灯器のそばにいると潮の香りが妙に強くなることがある」「壁面の結晶をサンプリングしてみたら……海水と区別がつかなかった」
彼は調査員に対しこうも言った。「私はこの灯台で三十年、灯籠に名前を書いてもらって生きてきた」。

ブルターンヌ地方の古い言い伝えには「海から戻ってきた女を二度と灯台に入れない」という呪文がある。
しかし彼らはすでに忘れている。

灯器室に水滴が残るたびに、彼女は灯台を離れることはなく、外の世界を求め続けるのだ。


この話ではフィニステールの海岸線に伝わる伝承の断片が再構築されている。実際のラ・テュール・ド・コルヴィアン灯台は現実に存在するが、物語は創作によるものである。各地には必ず「潮風の中に息をする者」がいると信じている人々がいるはずだ。