心電図モニター

知人の看護師、Sが話していた。彼女は地方都市の小さなクリニックで夜勤をしている。

そのクリニックは、日中は内科として営業し、夜は急病人に対応する体制だった。病室は三つ。常に満室になることはない。

ある日の深夜三時頃、Sは看護師ステーションでカルテを整えていた。

その時、向かいの病室の一つから、心電図モニターのブザーが鳴った。

ピピピピ——

Sは慌てて病室に駆けつけた。病室のベッドには患者がいない。

ベッドメイキングが終わり、誰も入っていない状態だった。

なのに、心電図モニターは正常な脈波を映している。

ドクン、ドクン、ドクン。

一分ほど経っても、脈は止まらない。四十前後の安定した心拍数。

Sはモニターを再起動した。一瞬、波形が消えた。

しかし、三秒後にはまた同じ脈が現れていた。

Sは電気を消して、病室を出た。廊下のドアを閉めた瞬間、心電図の音が聞こえなくなった。

でも、次の朝、朝勤の看護師に「昨日の夜、病室のモニターが勝手に動いてたんだよ」と話したところ、朝勤の看護師は顔を青くした。

「あの病室、去年の十二月に亡くなった患者のもの。遺族がモニターを寄付してくれたの」

Sは冷や汗をかいた。

「でも、モニターがつながっているコードの先には、なにもつながっていないよ」

Sは今でも、夜勤の時にその病室の前を通るのが怖いという。

夜が更深まるほど、心電図の音は小さく、しかし確かに聞こえてくる。

ドクン、ドクン、ドクン。