病室のドアに貼られた氏名札の一部が滲んで消えかかっている様子を俯瞰で描いたもの。白地に赤文字の漢字が、水に溶けたインクのようにぼやけている

保険調査員の現場観察記録と病院側公式回答の食い違いから抄録する。\

【第1段 / クレーム調整班の聞き取りメモ抄録】

四月十一日 14:05~

対象:中原淳子(妻・53)。被害者:中原正樹(夫・62・脳梗塞で三月二十日に第一病院へ救急搬送)。

申告内容:「三月二十八日に退院しました。入院中は毎月面会していたのですが、四月に入り突然『先生に確認してきます』のメールが届きました。そのあとに電話をしても出ないんです」

病棟入口横の掲示板に貼られた名前札。一番上に中原正樹と書かれているが、直後に赤い丸印で囲まれている

*写真左端の「中室」表記が曖昧に見える*\

【第2段 / 病院公式回答抄録】

第一病院・病棟管理から四月十五日付で確認:「患者中原正樹については、三月二十八日に主治医より『在宅療養指示書』が発行され退院措置完了済。その後当該患者が当病棟を受診した記録はございません」

深夜の監視カメラ映像の一部。廊下の奥に人影がぼんやりと映っているが、輪郭のみ不鮮明で、何者かわからない

【第3段 / 病院外部からの追跡】

四月十六日以降、妻から再度三回連絡が入る。三次目は「退院した筈の家には、また夫がいたと報告」との内容。「しかしその日に私は別の場所におりました」。

第一病院電子カルテを問い合わせたところ、「中原正樹(入院歴あり)という名前の患者記録は消えない」という返答を得た。