深夜の放送が終わって、プロットは静かになる。その静かさを僕は「時間」と呼んでいた。

『ナイト・ゲート』に出演し始めて三年目の頃のことだ。リスナーから一通の手紙が来たと同時に、メールも来た。「録音ファイルも送りますね」——その手 paper の付録だった。

曲間の3秒の沈黙を切り取る。僕はその時間を「間(ま)」と呼ぶ。番組で使われる無音帯域のことだ。リスナーたちはそこに何が聴こえるか、聞きたがる。

最初は面白かった。「先生、自分の呼吸が止まります」「後ろに誰かがいる気がして」——冗談じみた投稿が多い。だがある水曜日の2時、とあるリスナーの曲間の3秒が僕を止めた。

波形を見れば空欄だ。しかし再生すると——「あ、開いた」——の声が聴こえる。 0.8秒目。声の主は男性か女性なのか判別がつかなかったが、発語の内容だけは明確だった。「もうすぐ来ますよ」。

次に送られてきた曲間3秒は異なる内容だった。「鍵は掛けてある?」「今、あなたはその質問をしています」——まるで放送を覗いているかのように。僕のプロットに、その日と同じ時間帯の出来事が書かれていたから。

それからというもの、曲間の3秒が僕の部屋に侵入してきた。

「下を見て。あなたの足元にはいないでしょう? でも、ここにはいる」「天井の穴、覗いています? 僕は覗き込んでいます」といった内容が、週を追うごとに僕を特定していく。最終日には「プロット」——まさに自分の名前——で呼びかけられた。

メールの送信元アドレスは毎週変わるが──受信時刻はずっと同一だ。毎週水曜日の夜1時57分34秒。(番組のオープニング、曲と曲の間はちょうど90分のうち3秒)

今朝、録音ファイルを送ってくるリスナーから電話がかかってきた。「先生、また3秒を送りますね」——その声が最後に言ったのは僕のプロットを名指ししてだった。それから15分後──プロットのスピーカーから小さな「パチン」という音が響いた。

誰かがスイッチを押した。僕の放送室の、使わないチャンネルを──

画面には録音波形が自動再生し始めた。「先生、今日も3秒です。聴いてください」

沈黙が始まった。90分のうち最後の3秒め—— 「あ、開いた」

その瞬間、プロットから「鍵は掛けてある?」の問いに戻った。しかし今度は違う——「もう外には出ないでくださいね」という声が続く。「僕があなたの横にいるので、この部屋の外には行けないよ」。

___3秒の空白___

※この3秒間は、放送終了後はもう聴けない。リスナーからの追加投稿もない——しかし、毎週水曜日の夜1時57分34秒に、あなたのスマートスピーカーが微かに「パチン」と音を立てるかもしれない。「あ、開いた」の答えを、今夜も待っている