深夜2時のインターホン
2026年09月05日
実は自分の話なんだけど、書こうか迷った。でも誰かに知っておいてほしいことがある。
僕は一人暮らしを始めてから3ヶ月。二十代前半、新築のアパートに越してきたばかりの頃の話。
ある夜、2時を回くらいしていたと思う。寝ぼけ眼でスマホを見る。画面に「スマートロックの解錠履歴」の通知が。でも僕はもう寝ていて、ドアを開けた覚えはない。
「バグかな」って思って寝た。
次の日も同じことがあった。2時17分。同じ時間。もう少し怖くなった。
3日目の夜は敢えてふりをした。目をつぶって、呼吸を浅くして。静寂だけが部屋にある。
そしてまた、2時17分。
インターホンが鳴った。
モニターカメラを見ると、廊下には誰もいない。ただの白い壁と、消えかけた非常口の緑の灯り。
「またバグか」
そう思いかけた時、モニター画面の隅に気づいた。
ドアの前の床に、水滴が落ちたような黒いシミが、一つだけあった。
でも僕は水も何も飲んでいない。
4日目の夜。僕はカメラのアプリを開いて、スマホをドアの前に置いた。録画モードで。
2時16分。インターホンが鳴る。
モニターカメラを見ると、廊下には誰もいない。
でもスマホの録画画面には、違うものが映っていた。
廊下の隅に、人が立っていた。
黒い服。俯いて。肩が小刻みに震えている。
そしてインターホンが鳴った瞬間、その人物がゆっくりと頭を上げた。
顔は映っていなかった。ただ、黒い画面に白く光るものが、二つ。
目が、反射していた。
5日目の夜。インターホンは何もならなかった。
でも、2時17分ちょうど。
インターホンのベルが、内側から鳴り始めた。
鳴り続けるベル。
モニターカメラを見た時、僕は声を失った。
画面の中に、僕の後ろに、もう一人の僕が立っていた。
同じ服を着て。同じ顔をして。
でも、その「僕」の目は、モニターカメラの方をじっと見ていた。
そして、モニター画面の中で、ゆっくりと笑っていた。
今でも2時17分になると、息が止まる。
もし同じことが起きたら、カメラを回さないでほしい。
映るものが、もう「あなた」ではないかもしれないから。