毎晩23時に届く不在通知SMS

一人暮らしを始めて三ヶ月目の頃の話です。

私は東京・世田谷の古いマンションの一室で暮らしています。築四十年の木造アパートで、壁が薄く、隣人のテレビの音や笑い声がもろに響いてくる物件です。

そのうち、ある出来事が始まりました。

毎晩、正確に23時00分にスマートフォンが振動し、宅配便会社の不在通知SMSが届くのです。

「本日のお届け物をお受け取りいただけませんでした。お問い合わせはこちら→0120-XXX-XXXX」

最初は「あ、今日届くものがあったっけ」と思い、アプリで確認しました。確かに、「佐川運輸」の名前で、私の住所宛ての届け物が記録に残っている。でも、私は何も注文していません。

「バグかな」と思い、SMSを削除して寝ました。

次の日、また同じ時間に来ます。

「本日のお届け物をお受け取りいただけませんでした。お問い合わせはこちら→0120-XXX-XXXX」

同じ文章。全く同じ文章。文字数まで同じです。

「SMSのアドレス帳がバグってるのか」と思い、電話番号を確認しました。確かに配送会社の公式番号でした。でも、アプリには何も登録されていない。

三日目、四日目、五日目――毎晩、正確に23時に届きます。

もう嫌になって、23時にアラームをセットして起きていることにしました。画面が点灯し、SMSが届く瞬間を直接見るのです。

届きました。

でも、おかしいことに気づきました。

SMSが届く0.5秒前、部屋の明かりがわずかに暗くなったのです。蛍光灯のチカチカではなく、まるで何かが電気を吸い取られたような、微かな暗転です。0.3秒で元に戻ります。

そしてSMSが届く。

私はスマホのカメラを向け、部屋の中を撮影し始めました。誰もいない。押入れも開けた。クローゼットにも入らない。

七日目、SMSの内容が変わりました。

「お届け物をお待ちしています。もうすぐ到着します。」

胸が詰まりました。私はドアチェーンをかけ、スマホで110番に電話しようとした瞬間、玄関のドアノブがゆっくりと回りました。

回った。

でも、ドアは開きません。チェーンがかかっているから。

回っているのは、外からではなく、内側からでした。

チェーンが軋む音。金属が金属を削れる、低い音が、三十秒間続きました。

そして、静かになりました。

その夜以降、SMSは届かなくなりました。

でも、今でも毎晩23時になると、部屋の明かりがわずかに暗くなります。

そして、ドアノブが、ゆっくりと回る音が聞こえるのです。

外からではなく、内側から。