深夜の駐車場で、鍵を挿した瞬間にアラームが鳴った
2026年12月08日
実録の話です。知人の話だけど、その人物が現在も「あの日以来、夜中の駐車場には絶対行かない」と言っている。
知人は三十二歳、東京・世田谷のマンションに住む会社員。残業続きの夜、仕事帰りに地下駐車場で車に乗ろうとした。
地下二階の駐車場は真夜中なので、ほぼ無人。蛍光灯が所々に点在して、一部が点滅している。足音が妙に大きく響く。
知人は自分の車——トヨタのアクア——に近づき、キーレスエントリーのボタンを押した。
カチッ。
ドアロックが解ける音。その瞬間だった。
ブッ!!ブッ!!ブッ!!
車のアラームが鳴り始めた。
「えっ?」と知人は思った。鍵を持っていないのに、なぜアラームが?
キーレスエントリーのボタンを押したわけでもない。持ってるキーケースに触れたわけでもない。
アラームは止まらない。三秒ごとに、鋭い音声が地下空間に響く。
知人はその時、ふと気づいた。
自分の車のサイドミラーが、自分の方を向いているということに。
通常、サイドミラーは後方を見ているはずだ。だがその時、左右のミラーの反射面が、知人自身を映していた。
知人は後退った。アラームは止まらない。
知人が後退るたびに、ミラーの反射も少しずつ——知人の方を向いていく。
知人は走った。エレベーターホールまで走って、エレベーターを呼んだ。
エレベーターが到着し、中に入った時、知人はふと地下駐車場の方向を見据えた。
ミラーの反射が、エレベーターホールまで見えているわけがない。
だが、知人は確信した。
自分の車は、もう停まっていないということに。
次の日、知人は昼間に駐車場に行った。車は普通に停まっていた。アラームも鳴っていない。
だが、運転席のサイドミラーを覗き込むと、知人は冷や汗が出た。
ミラーの表面に、指紋が一つ、付いていた。
運転席の窓から、外側——つまり、外からミラーに指紋を付けた痕跡。
知人はその日以来、車に乗るたびに、サイドミラーを必ず確認するようになったそうです。