実家の固定電話が夜中3時に鳴り出して、出たら自分の声がかかってきた
2026年09月10日
実家の固定電話が、夜中3時に勝手に鳴り出した。
実家というのは、地方の田舎にある二世帯住宅のことだ。私は都会で一人暮らしをしているが、先月末に祖母の葬儀があり、帰省していた。帰省最終日の夜、皆が寝静まった頃のことだった。
「りんっ、りんっ、りんっ――」
音は上階から聞こえてきた。実家には今でも古いタイプの固定電話がある。祖母が使っていたものだ。コードレス電話ではなく、受話器が本体に繋がった、あの昔ながらの電話だ。
「お父さん、お母さん、電話が鳴ってるよ」
私は布団の中でそう叫んだ。何も返事がない。親は別室で寝ているので、声が届いていないのかもしれない。もう一度言おうとしたその時、鳴り音が止んだ。
静寂。
「……誰かと思ったら、また鳴った」
「りんっ、りんっ、りんっ――」
同じ間隔で、同じ音で。
私は仕方なく上階に上がり、受話器を取った。
「もしもし」
向こう側から、かすかな呼吸音が聞こえた。
「……誰ですか」
また静寂。
そして、かすかに、自分の声が聞こえた。
「もしもし」
それは、私が今さっき言った「もしもし」と全く同じ声だった。同じ間隔で、同じ高さで、同じ強さで。
私は受話器を握りしめたまま、何も言えなかった。
「……もしもし、もしもし、もしもし」
向こう側から、私の声が繰り返された。まるで、私が言った言葉を録音して、再生しているようだった。
「誰だ、誰だ!」
私は叫んだ。すると、向こう側からも同じ声が返ってきた。
「誰だ、誰だ、誰だ!」
その瞬間、受話器から、かすかに笑い声が聞こえた。
とても小さくて、でもとても明確に。
私は受話器を放り投げて、部屋から逃げ出した。次の日、親に話をすると、親は顔色を変えて言った。
「あの電話、祖母が亡くなってから一度も使っていないわ。コードも抜いてあるはずなのに」
私はその場から走り去った。帰省を諦めて、都会に戻った。
その夜から、私の携帯電話が夜中3時に勝手に鳴り出すようになった。
出ても、向こう側からは自分の声が聞こえるだけだ。
「もしもし」