ポロドニツャの姿 — 麦畑の奥で立つ白亜の女

麦穂を掴んだ手が止まったのは午後3時27分だった。夏の空は澄み切っていて、風に揺れる小麦の頭が何千本も重なった先の地平線が震える。

彼は旅人を迎えるはずもない田舎道を歩いて1時間を超えていた。地図に載っていない村へ行く途中のことだ。東欧のとある地方で、道はただ続いて終わりがなかった。

「ねえ」 — その声は耳元ではない。小麦畑そのものから響いてくるような、遠いどこかから寄ってくる風がもたらした囁きだった。「こっちに来てくれない?」

麦の向こうに白い影があった。女だ。背が高く、髪は黒で長くて、風になびいているのに方向がない。風が左へ吹いたとき、彼女の髪の毛だけが逆向きに右へ流れていた。

「あなたはもう3日歩いていますわね」彼女は笑った。「お疲れでしょう? 麦の中に休憩室がありますよ」。

旅人は足を止めようとせず、小麦を掻き分けて進んだ。「見えない」と彼は言った。「麦は腰ほどまでしかない」。

しかし女の声は近づく。一歩ごとに遠かった場所が、途端に目の前にあるみたいに感じられた。まるで空間そのものが伸縮していたようだ。

「もう見えますわね」彼女は小麦の中に立っていた。「膝まで沈むまで来てくれたのね」 — 麦は突然成長し、旅人の腰まで迫った。金色で熱い穂が肌を擦る、まるで指の形だった。

彼は走った。麦の中で引きずられる、根も葉も彼の脚に絡みつく。小麦の葉は鋭く、切られた腕からは血が出なかった。代わりに麦汁の匂いがした。

「止まらないで」と彼女の声。遠い場所からではなく、小麦の中を伝わってくる振動だった。「眠る前に話さなければ。3日間、ずっと待っていたから」。

その瞬間、旅人は気づいた — 麦畑にはもう一人の男が座っていること。同じ服装をして、目は見開かれているのに瞳がない。麦に埋もれたまま静かに微笑んでいる。

麦の下に何かがいる。麦はただ麦ではなかった。地面の下全体がかさぶたのように重なり合っていて、その中に過去3日歩いた旅人の息遣いが封じられている。