プリクラに写っていた余分な人

プリクラの機械

先週、友人のAと渋谷のショッピングモールに行った。目的は新しいカフェ巡りだったが、ついでに100円プリクラで一枚撮ろうということになった。

プリクラコーナーはモールの奥、エレベーターの隣にあった。平日の夕方ということもあって人はまばらで、機械もきれいにメンテナンスされた新しいタイプだった。

「じゃあ三枚目、デコなしでリアルでいこうか」

Aがそう言って画面の「デコレーションなし」ボタンを押した。モニターに映った私たちの姿は、いつも通りの明るさだった。カウントダウンの「3、2、1——」

シャッター音が鳴り、プリントが始まる。

「ねえ、これ見て。三枚目、ちょっと暗いけどいい?」

プリントされた写真を手に取って見ると、確かに露出が少し足りていない。背景は暗く、私たちの顔はかろうじて見える程度だ。

「まあいいや。でも二枚目の方が顔明るかったね」

私たちは二枚目の写真を見比べながら、次のカフェに向かった。


その夜、帰宅してスマホでプリクラデータをバックアップしようとした。プリクラアプリを開き、先ほど撮った写真のデジタルデータを確認すると——

私の背中に、手が乗っていた。

画面の右端、Aの後ろに立っているのがいた。長い黒髪、白い服。顔は写っていない。ただ、私の肩に手を添えるようにして、写真の中に立っている。

「……?」

モニターで見たときは誰もいなかった。プリント写真にもいなかった。しかしデジタルデータには、誰かが写っている。

Aに写真を送ってみると、即返事が来た。

「これ、誰?後ろに人いるよ」

「いや、プリクラ撮ったときは誰もいなかったよ。モニターにもプリントにもいなかった」

「でも写真には写ってる。これ、あなたの後ろの人の服、白くない?プリクラの背景、白くなかったっけ?」

その通りだった。プリクラの背景は薄いブルーだった。しかしデジタル写真の背景は、明らかに白くなっている。そしてその白さの中に、人の形が浮き上がっている。


翌日、私は一人でモールのプリクラコーナーに行った。機械は普通に稼働していた。

「ちょっとテストで撮らせてもらう」

私は一人で機械の前に立ち、モニターに映る自分の姿を確認した。誰も後ろにいない。シャッターを切り、プリントを取り出す。

プリントされた写真は、いつも通りの私 alone。

アプリでデジタルデータを確認すると——

背景が白くなっていた。そして、私のすぐ後ろに、先ほどの写真と同じ人物が立っていた。長い黒髪、白い服。顔は写っていない。手が、私の肩に添えられている。

機械のモニターには写らない。プリント写真には写らない。デジタルデータだけに写る。

私はその場で、プリクラの機械から離れた。


その後、Aに「もうプリクラ撮らない」と言うと、Aは不思議がっていた。

「だって、後ろに人が写ってたでしょ。あれ、何だったの?」

「……俺たち、プリクラ撮ったときは誰もいなかったよ」

Aが黙り込んだ。

「でも、私のスマホにも写ってるよ。あなたの後ろに立ってる人、私の方を見てる」

その言葉を聞いて、私は背筋が凍るのを感じた。

デジタルデータの写真。プリント写真。モニター。

どれにも写っていないのに、ある人には写る。ある人には写らない。

その写真の人物は、今も私の後ろに立っているかもしれない。