記録される入居者
2026年07月29日
以下は2026年3月、閉鎖された「ほほえみケアセンター」のデータ復旧業務で回収したログ資料である。本施設の廃業届け出は平成三十三年二月二十八日付であり、同日に全機器は電源オフされているはずである。
第一資料:患者管理システムの入退室ログ(令和四年度・年間)
| 氏名 | 入室日 | ステータス | 担当ナース |
|---|---|---|---|
| 山本太郎(92歳) | 2025-01-14 | 死亡2026-03-01 | 佐藤 |
| 田中花子(81歳) | 2025-03-22 | 再入院2026-02-29 搬送元:市立病院 | 山本 |
| 渡辺正人(74歳) | 2025-06-05 | 入室保留 | — |
| 佐藤恵子(87歳) | 2025-09-11 | 死亡2026-03-01 | 田中 |
令和四年度の総入居者数記録:八十四名。
しかし本施設を廃業した直後の住民調査では、在籍していた高齢者は四十二名のみだった。残りの四十二名は「市立病院へ再搬送済み・退所済み」と行政資料に登録されている。ただし、当該病院の転院記録には該当する患者名の存在が確認されていない。
第二資料:ナースコール受信ログ(2026年1月14日〜3月1日)
本施設の全施設廃業後、NASに保存されていたナースコール受信データである。
【2026-02-15 23:08:22】入室No.207より受信
メッセージ:「水が欲しい」
応答者:佐藤ナース
※2026年現在、本施設にはNo.207号室が存在しない。当該部屋は令和三十年に改修工事により廃止されている。
【2026-03-01 14:07:59】入室No.312より受信
メッセージ:(無音状態・約三分間)
応答者なし
※No.312号も廃室済み。この日は施設全室が空室だったと退所者四人の証言が確認されている。
第三資料:システムバックアップの日時スタンプ分析(令和六年一月一日)
復旧業者による技術報告書より:
「NAS内部のシステム時刻は、平成二十三年十二月三十一日に固定された状態で停止している。しかしログファイルには当該日付以降の日時も記録されている。これは通常発生しない」
追加検証結果:
「記録された二〇二六年二月十五日二十三時八分二十二秒というデータが実際に生成された時刻を推定するには、NASの内部クロックを再現する必要がある。現在のNASに搭載されている水晶振動子の周波数測定値は、平成二十三年時点で設計されたものと一致している。」
「つまり、NAS自体が『令和八年の正確な時刻を知っていた』ことになる。そのデータがどこから受信され、記録されるに至ったのか。」
本資料はすべて公開済みである。しかし復旧業務を担当した担当者が「NASの電源を切っていない」という事実は、報告書に載っていない。