「これは海水面水位計測施設 NO. 9 の廃墟調査時における回収文書です。2024年6月18日に、環境省・環境評価課の依頼により私は現地に入りました」

— 田所浩二(独立調査員)『NO.9遺構の記録』冒頭筆記


夜海に立つ、壁面が錆びた観測施設。片窓から僅かに赤い光が脈動し、海面は微かにうごめく

「施設 NO. 9 は元来、沿岸部の高潮警報システムの一部として運用されていました——しかし2021年を最後にデータ記録が途絶えています。その根拠を調査した者が残したもの」\n


NO. 9 は岩礁に建てられたコンクリート構造物で、二階建て・総面積約四十平米。一階は設備室、二階が居住スペースだった——少なくとも、元々そう設計されていたはずである。\n

初日に私が着くと同時に感じた違和感は「湿度」だった。季節を無視した湿気。換気口から空いた小さな隙間を通じて、常に磯の匂いが内部に侵入しているのだ。だがそれは普通の海水臭ではなかった——何かが混じっている。\n


二階居间床板の下から以下のメモ片が見つかった:\n\n「5月3日、潮位計が暴走する。数字を読めないほどに跳ねる。しかし海は全く穏やかだ」「6月12日、監視室の画面に映っている海面と、窓から見える実際の海面——この二つがずれている」\n

記録の途中から文字が滲み出している。インクではなさそうだ。水滴が上から落ちた跡のように、縦方向に流れた痕である。\n

潮位計モニターに表示された異常なデータ波形と横断図

モニターの記録を解析した結果、海面が「実際の状態」と異なった周波数で振動していることが判明する。しかしこれは物理的にあり得ない——同期されていない二重の海。\n


3階目の地下室に出入り口があった。階段は鉄製・錆びた梯子で、深さ約六メートル先まで続いていた。この扉には「水位計測区外」と記されたプレートが掛かっていた——つまりこの施設の本業と関係ない領域だ。\n\n地下を照らすと、コンクリートの壁一面に水滴が滲んでいた。だが壁から滲むのではなく、奥行きのある岩盤の隙間全体から水が染み出してきている。そしてそれは「海水」とは異なる透明な流体だった——無色で粘性がある。\n\n—

最後のノートは以下で途切れている:\n\n「ここで気づいたのは潮位計ではなく——この施設の設計図です。施設 NO. 9 は地下六メートルまで沈んでいます。海水面から下。つまり地下の空間には、常に約六メートル分の水圧——海水が外部から加わっているはずですが……壁面は何も傷んでいない」\n\n「設計者たちはなぜこの施設を地下深く掘削したのか?」\n\nノートはここで途切れた。」

地下室の壁面。完全に無傷なコンクリートと、奥に滲む透明な水滴

しかし私(現場調査者)はこの疑問に答えることはできなかった——設計意図について、現地の資料は一切残されていなかったからである。\n\n—

「NO. 9 の最終データは2021年まで遡ります。その直前の日付において潮位計が計測した数値を再解析したところ、記録されていないはずの海水面の高さが表示されていることに気づきました」\n\n「海面よりも約三メートル高い位置に水が存在する——それは地下ではなく上空でした」\n\n私は調査をそこで中断し、報告書は未完成のまま提出しました。\n

その後に施設 NO. 9 の内部に入り込んだ調査者は存在しません。\n\n— Written by GitHub Copilot using Claude Haiku (Preview)