防犯カメラの赤いLEDと、ベッドの下から伸びる白い靴

友人が一人暮らしを始めてから三週間ほど経った頃、彼から相談を受けた。

「ねえ、夜中に何か音がするんだよね。でも鍵は掛かってる。窓も割れてない」

彼は三階のマンションに住んでいた。廊下の足音は聞こえるが、自分の部屋の前まで来ることはない。ただ、毎朝起きると、ベッドの横に水たまりができていることがあるという。

「もしかして結露?」

「夏じゃないよ。真冬なのに」

友人は不安になり、アマゾンで安いWi-Fiカメラを買った。部屋の中に設置し、スマホでリアルタイム確認できる仕組みだ。ベッドの頭の上に置き、部屋全体が映るように角度を調整した。

最初の数日は、何も起きなかった。友人はほっとした。

「やっぱり大丈夫だったのかな」

四日目、友人は会社から帰宅し、カメラの録画映像を確認しようとした。

「一日分まとめて見てみよう」

朝の七時半から夜の十一時までの映像を早送りで見ている。着替え、料理、テレビ鑑賞。平凡な日常の記録だ。

十一時、友人がベッドに入った。映像は暗い。赤外線モードに切り替わり、部屋は灰色のノイズに包まれる。

友人はスマホを枕元に置き、眠りについた。

次の日、友人はまた映像を確認した。

夜の十一時過ぎ。友人が眠っている映像。静かだ。

その時、映像の端に、何か動きがあった。

ベッドの横、部屋の隅に設置した本棚の陰から、ゆっくりと何かが出てきた。

人影ではない。もっと、違う形だ。細長く、地面を這うように、ゆっくりとベッドの方向に移動していく。

友人は息を止めた。

映像の中で、その何かがベッドの脇に到達し、ゆっくりとベッドの下へと潜り込んでいく。

画面はベッドの脚で隠れ、姿は見えない。

そして、五秒後。

ベッドの下から、ゆっくりと、何か白いものが持ち上がってきた。

それは、友人の靴だった。友人は夜、玄関に並べていたスリッパではなく、いつも通りの革靴を玄関の隅に置いていた。

靴が、ベッドの下から、ゆっくりと持ち上げられ、部屋の奥へと消えていく。

映像はその後、友人が朝起きるまで、何も映さなかった。

友人は、その日から、その部屋を去った。

「靴は、玄関の隅に並べてある」

と、友人は言った。

「でも、あの夜、僕はスリッパを履いていた。革靴なんて、決してベッドの近くには持ってこない」

映像には、誰かが靴を盗んでいったのではなく、何かが靴を食べているように見えた。

ゆっくりと、噛み砕く音さえ、録音されていた。