スマートドアベルが夜中に撮影していた、部屋の中の人物
2026年08月14日
友人の男性(28歳、東京都内、一人暮らし)の話だ。
先月のこと。彼は新築のマンションに引っ越して一ヶ月が経った頃、玄関にスマートドアベルを取り付けた。スマホと連携できて、外出先でも誰かが来たらリアルタイムで映像が見られる優れものだ。
最初は特に変わったことはなかった。宅配便の配達通知、管理人の巡回、たまにセールスの電話。毎日当たり前のようにアプリを確認していた。
ある深夜、二時四十七分のこと。
彼のスマホにプッシュ通知が飛んだ。「玄関で動きを検知」。
彼は眠たそうにスマホを手に取り、アプリを開いた。ライブ映像が起動する。
モニター画面には、彼の玄関が映っていた。廊下の照明は消えていて、薄暗い中、ドアの向こうは真っ暗だ。誰もいない。
「また誤動作か」
彼はスマホを置き、寝返りをうとうとした。
三十分後、再び通知が飛んだ。「玄関で動きを検知」。
彼は再びアプリを開いた。今度はライブ映像ではなく、録画映像の再生を促すメッセージが表示されていた。彼が録画機能を有効にしていたことに、その時初めて気づいた。
再生ボタンを押した。
映像が始まる。玄関のドアが、外からゆっくりと開いていく。
靴を脱いで、入ってくる人物がいた。黒いフード付きのコート。顔はフードの陰で見て取れない。その人物は玄関に立ち尽くし、数秒間、まるで部屋の中をじっと見つめるようにカメラの方向を見つめていた。
映像は十五秒間だけだった。
友人は震えた。彼は鍵をかけていた。窓も閉めていた。どうやって入ってきたのか。
次の瞬間、彼は別の通知に気づいた。「録画ファイルの共有」。
誰かが彼と、同じクラウドアカウントの共有フォルダに映像をアップロードしていたのだ。
彼は共有元のユーザー名を確認した。
それは彼の、スマートドアベルの管理者アカウントそのものだった。
翌朝、彼は大家に連絡し、管理会社を呼んだ。大家は「ドアベルの設定がおかしいんじゃないですか」と言った。
友人はそう思いたかった。
しかしその夜、彼は寝る前にすべてのスマートデバイスを確認した。スマートドアベルのライブ映像をスマホで見た時、彼は凍りついた。
モニター画面には、彼の部屋の奥から、彼が今見ている様子が映っていた。
スマートドアベルのカメラは、玄関を向いていたはずだ。