配送センターの夜勤三ヶ月目。倉庫床はずっとうるおうていて、埃を吐き出すコンベアベルトが回る音だけが時間を知る道具だった。俺たち六十五人の作業員はそれぞれ一つのラックを任され、機械の指示に従い品物を仕分けし積むのである

灰色の空間に配置された無機質な白い円盤。底辺から緩やかに波打つアニメーションが発生する

最初の変化はとても小さかった、ある日の深夜二時過ぎに作業台の上で指先から微かに鈍い振動を感じた。コンベアではない。俺の手首から伝わってくる自分自身の内側からのものだった。「睡眠不足だろ」と先輩が言った。「よくあることさ。体は動くんだけど脳が追いついてないんだ」

次の日からその震えは脈拍と同期するようになった。「ドキッ、ドキッ。ドクン…」。俺の仕事場の隣にあるラックにはいつも同じ赤い箱が届く。「特定品目・特殊包装」と記載されている。中身を見たことなかったが開封チェックのときだけ許可される。ある日の夜勤の終業五分前に俺の番が回ってきた。

封を開けた瞬間、中から蒸しえた湿気と甘く腐敗したような甘い匂いが漏れた。白く丸いもの、直径十五センチほどの円盤状で表面が脈を打つようにうねっていた。「包装指示にて直接触れないよう」と書いてあるんだけどと俺が訊くと先輩の口調は冷静だった。「四年いたけど今まで誰も理由なんて訊かなかったよ」

その夜から俺の胃袋が動くようになった。朝起きるといつも同じ場所に痛み、左下腹あたりの深いところから何か中に入れてほしいという訴えがありさえした。「食べろ」という声が聞こえたのは脳髄ではなく内臓の一部からだ。だが実際には食べることはできなかった。

次の日の夜勤中の俺はついに開けることとし手元に赤い箱が開いたとき奥底から湿気と甘い腐敗香が漂ったところだ。先輩の口調は平然としたままで四年この倉庫で働いても理由なんて誰も教わっていませんよと言っていた、その晩終業後俺の腹部が完全に震え出した。

左下腹から上へと脈打ち外に出てほしいという声が耳に届いた。「もう十分養ったはずなのに」—俺自身の内臓がまるで別物の意思を持っているかのように訴えた。次の日の朝看護師が健康診断のために来室した。「胃袋の蠕動異常。さらに言うと…」彼女は検査用の器具を俺の下腹部に当てた。「腹部の中に何かが同居しているようですおそらく外から送られたものですね」と言い切ったあと紙にメモを書き出した。

配送センターのマニュアルには最後にこう記されている、開封は最終段階における養育完了の合図である

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