介護施設の平面図。8つの部屋が均等に並んでいる。真ん中の通路だけが少し幅広く、端は途切れているように描かれている

以下は2026年5月〜6月の夜勤職員3名へのヒアリング記録である。各回答には相違点があるため、詳細は原文のまま記載する。

《Aさん(夜勤パート14ヶ月)》

Q: 施設で変わったと感じたことはありますか?

A: ありますね……患者さんの記憶が変なんです。毎日似たようなことを聞くんです。「昨日の夕食は何でした?」って。私は毎回「カレーでしたね」って答えるんですが、実は2日前に和食に変更になっていて、カレーは出ませんでした。それでもAさんは確信犯的に「カレーです」と言う。確認すると、当日の設定メニューにはカレーがなくて。どうやら自分が口から出した答えをそのまま事実として定着させてるらしいんです。

《Bさん(夜勤パート3ヶ月)》

Q: 患者さんの記憶は通常どおりですか?

A: いや、正常じゃないです。認知症の人の発言って当然曖昧なんですが、うちの施設だけ違う。彼らが「思い出した」って言ってる内容が、他のスタッフの間で食い違ってるんです。ある日おじいちゃんが「嫁さんに来月来てくださいって言った」と言って、その嫁が実際に1週間後にきたんです。別の日は「息子が迎えにくるよ」なのに誰も来なかった。記憶が未来を教えてくれるのか、「記憶を作る」のかわからない。

Q: 実はAさんとBさんは、別の夜勤員だったとすると矛盾しませんか?

《Cさん(夜勤パート5年)》

「3ヶ月目に入った頃、患者さんの記録が見えないんですよ」。Aさんの質問への答えを、Cさんはこう訂正した。「1ヶ月くらい前からです。ファイルを開いても空欄になってる。もちろん紙はそこにあるのに中身がないんです」。

Bさんは「そんなことないですよ。私は確認してあります」と否定した。Cさんは沈黙した後、「でもBさんが言うカレーってメニューは、実際に4月に出たんですよ。だから3ヶ月前から記録が見えなくなり始めたのかもしれない」と言った。

《補足:夜勤時の記録》

5月下旬のある日曜日の深夜2時。Bさんはナースステーションにいたときに、患者・佐久間正雄(91歳)が廊下を歩いているのに気づいた。

「どこに行きますか?」と声をかけた。「お風呂に入りに」—しかし夜勤時にお風呂は使えない。

するとBさんが気づいた——佐久間の患者記録の中に、昨夜の「2:05-2:17 記憶消失」欄に、別の記述が追加されていた。

【「患者・佐久間は夜中に施設内を徘徊する癖がある。過去8回の夜勤時に確認済。」】

しかし佐久間が徘徊すると記録されているのは5日後のことであり、昨夜の話ではない。つまり、「未来の記録が過去を説明している」。


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