潮が引いた砂浜に、黒く沈んだ柱が一本だけ現れており、その表面には白い文字で数字と時刻が刻まれている様子は深夜の静寂の中で異様な光を放っていた

以下は「波見岬潮汐観測所」から回収された記録簿の写本である。保管者は不明。

三月二十三日、午後三時零四分。

潮位観測所の記録簿の最新ページが開かれた。

次の日の「深夜一時二十二分、波見漁港第二岸壁付近で男性遺体発見」という新聞記事と、今日の潮汐表が完全一致したことを、私は確認してしまった。

三月二十四日、午前十一時はち分。

今日もまた違う数字があった。「四月二日 十七時四〇分 東三番杭付近」。

昨日と同じ形式で。潮位・気温・風向まで正確に記されている。

この記録簿を私はずっと「過去」のものだと思って管理している。しかし、開くたびに中身が更新される。明日の潮汐表だけが追加され、昨日分の記録は消去される。

四月一日の朝。

ラジオで速報が流れた。「昨夜、東三番杭付近で男性遺体が発見された」と。

潮位・気温・風向が今日の記録簿にすでに記されていた。

私は観測所から引き返す。でも次のページには次の日付が書かれている。明日の出来事がすでに決まっているのだ。

四月五日。

今朝確認したら、今日の日付ページは空白だった。「何もない」ということは、今日誰も死ぬはずがないということだろうか。

もしそうなら、それ以外の日がすべて暴力を帯びたものであることを意味する。

夜明け前の潮汐表。常に次の日の犠牲者の時間を潮目に合わせて記すのはなぜか?それはただの予測かもしれないし……あるいは「計画」であり。


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