13階の待合室
2026年08月02日
Chapter One: The App That Wasn’t Installed
田所がスマートフォンで不気味なことを見つけたのは、火曜日の夜だった。彼は引っ越したての家を整理しながら、古いケースから前 owner の iPhone を見つけた。電源を入れたら、ロック画面のアップルマークと一緒に、何やら見覚えのないアイコンがあった。「待合室」という名前だ。 App Store に似た青い背景に、白抜きの椅子が一つ描かれている。
「App 消せばいいだけだろ」田所は軽く思い、長押しして削除アイコンをタップした。しかしアイコンはどこにも現れない。ロック画面からホームに戻って App ライブラリを覗いたら、見事にそこに鎮座していた。
彼は試しにアプリを開いた。起動速度が異常に速かった。ホーム画面は真っ白で中央に大きく「現在: 13階 / お待ちください」と表示されている。右上には小さなカウンターが点滅し続けており数字は「03:14:22」だった。
田所は首をかしげた。「13 階って何の。」そしてタイマーが逆算し始めた。秒単位でカウントダウンしている。3分半もすれば何か始まるということだろうか?
Chapter Two: The Waiting Room on Floor 13
タイマーの残り時間が0になった瞬間、画面が切り替わった。アプリはカメラ機能に突然遷移したのだ。レンズは自分に向いており、田所は自分の顔が映るのを確認する。しかし表示される背景は自分の部屋ではない。白く無機質な壁に、木製のベンチが三つ、淡い照明が天井から吊り下げられている。
病院の待合室だ。どこかの病院の待合室に自分が座っているのだ。画面内のベンチは5つ並んでいて、すでに4つには人が座っていた。
向かって右手から:
- 白衣を着た中年の男性(顔が白抜きの楕円で無表情)
- サポートバッグを持った高校生風の少年
- 全身を包帯で巻かれた女性
- 背の高いスーツ姿の男性(足元だけ見えない)
田所は画面を指で触った。反応しない。「いや、待って。これはどういう……。」
そして5つ目の席に「あなた」と表示される文字が現れたのだ。
Chapter Three: The One Who Was Already Waiting
田所はアプリを閉じた。しかしタイマー表示の数字は消えない。むしろカウントアップし始めた。「03:14:23」「03:14:24」。もう始まった後の待機時間だ。
彼は次の日、アプリの開発元を確認した。存在しない会社名。 App Store にもない。どこからインストールされたのだろうと電話会社に問い合わせたが、「ご記憶がないアプリケーションのインストールは確認できません」と言われたばかりだった。
夜になり、もう一度アプリを開いた。タイマー表示はそのまま。カメラ機能も開かなかった。「待合室」にアクセスすると今度は別の景色が現れた:同じ待合室だが、今度は向かい側からも5つの人物が見えていたのだ。そのうちの一人が、田所の部屋を背景にしている。
「……これは私の部屋の後ろだ!」田所は叫んだ。画面の中の自分より若い頃の自分がベンチに座っているのが見える。顔はまた楕円形で、目が二点で表現されただけだった。
アプリの右下に小さなテキストが現れる。「現在のお待ち時間: あなたの前にはあと一人」
Chapter Four: The Person Right Behind You
次の日会社を早退した田所は部屋に戻ってきた。スマートフォンを机の上に置き、トイレに行った時、画面が光った。「着席しました。」という通知が来たのだ。
彼は驚いて手机を見るとカメラ機能が開かれた状態で待合室が表示されている。5つの椅子の向かい側にも5つの人物。そしてその中の一人を田所が見ているのに気付いた。画面の中で自分がスマートフォンを見つめる姿が映し出されていたんだ。しかも田所の右背後から、何も写っていないはずの空間から誰かの手が伸びて iPhone の電源ボタンを押していたのだ。
田所は振り向いた。誰もいない。戻ると画面の手は無くなっている。「お待たせいたしました」というメッセージと共にタイマーリセットされた。「05:31:42」再びカウントダウンが始まる。この数字の意味を田所はもう理解できなかった。待合室の席に座ったら次はどこへ行けと言っているのか?
Chapter Five: Now Waiting on This Side
四日後、田所のスマートフォンは電源を入れた瞬間自動で「待合室」アプリを開くようになった。ホーム画面からそのアイコンが消えることなどあり得なかった。彼はカメラ機能を確認した:常に待合室に映り込むのは他ならぬ彼の姿だったのだ。ただ今日は画面の隅に一つだけ新しい人物が座っていることに気付いた。
田所は画面を凝視した。その人物が自分に向かって小さく口を開ける。「……もういい時間よ。」
画面の中の声だ。待合室に座る4人の人物が同時に視線を田所に合わせた。包帯の女性の指が田所の方向をさしたのだ。右手の白衣の男性も左手で同じ場所を指す。高校生も、スーツを着た背の高い男性も。全員田所の背後を指している。
田所はゆっくり振り返った。自分の後ろには壁しかない——しかし壁に映るはずのない影が立っていた。それは彼自身ではなく、もっと前に座っていた筈の自分だったのだ。もう一つの「自分が」待合室で出迎えてくれた。
画面の中でタイマーは止まったままだった。「13階 / あなたの前にはあと 0 人」と表示されている。
もう待つ必要がないと告げられているように。
Epilogue: The Waiting Room in the Wall Later That Night, When No One Was Watching the Screen, 5人の椅子の真ん中で一人が立ち上がった。その人物が「次」と言った瞬間、次の「田所」を探し続ける待合室に新しい患者が現れる時が近づいていたのだ。
画面には静かにカウントダウンだけが流れ続け、誰にも気づかれることなく待合は続いていく。
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<text x="45" y="30" font-family="sans-serif" font-size="16" fill="#7c2d2d" text-anchor="middle">⏳ 現在: 13階</text>
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<text x="80" y="75" font-family="sans-serif" font-size="13" fill="#aa3333" text-anchor="middle">待ち時間</text>
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