夜を彷徨う影のある男

砂嵐が止んだのは、真夜中だった。

タシュケントから北へ三千キロ、カラクム砂漠のど真ん中だ。私は車と運転手を失った。「次の町まで三十キロ」とタクシーが言っていた。だが夜になるとすべてが変わるのだ。

カザフの老夫婦が教えてくれた話がある。「夜中に道に立ってはいけない。砂塵の中に誰かがいる」 。

彼らの言い分では、昔カラクムの地下に棲む大群の男たちがいたという — その名をジン、あるいは夜の人々(Toki-no-Jin )。昼間は地中で冬眠するが、夜になると立ち上がる。姿は人のそれと似ているけれど、骨格だけが違う。

まず気づくのは声だ。夜中に道に立って「仲間に入れてくれ」と言ってくる。旅人の多くは車から降りる — そうすると、もう一つの話が始まる。「背負えなかった」 と老夫婦が笑っていたが、その笑い声には別の意味があったように思えた。

私が乗ったトラックの運転手アスラン氏は、一度だけ真夜中の砂漠を走らされたことがある。夜中二十時にタシュケントを出発し朝方に到着 — いつもは四時間だっただけに、何かがおかしいと思い始めたと彼は言った。

「カーナビが狂った」 。

位置情報が砂丘の中にあることを示すのだ。「ここには道がない」と言っても彼は走り続けるしかなかった。「夜中の砂漠を走ると道が見えてくる」とも言っていたが、それが本当に「道」なのか — 彼は夜中に一度も道を外れたくなかった。ある時、横を見ると砂丘の上に何か影があるのに気づいたのだ。

人の形をしている。ただ立っているだけだが、目が光っている。何人もの影が並んでいる。

アスラン氏は猛スピードで走り続けた。「止まるな。止まれたら終わりだ」と言っていた。朝方、ようやくカーナビが元の位置に戻った時は「砂漠の向こうから逃げ帰れた」と言った。

老夫婦は最後に、こんな言葉も残した。「砂漠の中で夜に道を見つけるのはジンだけ。人は決して見えない」 。「だから道があると思っても、それを走ってはいけない」

私はカーナビを見ながら、それでも三十キロだった道を今でも思い出している — 夜中に横を通り過ぎた、一人の影が。目が光っていたかどうかは覚えていない。しかし、その影は私の車をじっと見つめていたのだとしか思えない。

翌朝。砂浜にタイヤ印だけが残り、何かがそこにいたこと以上の痕跡などなかった。