ゴミ捨て場の不気味な光

毎朝決まった時間にゴミを出しているのに、朝まで戻っていた

これは自分の話だ。知人の体験談ではない。

僕は一昨年、埼玉・所沢の新興団地の一軒家に引っ越してきた。静かな住宅街で、朝は鳥の声が聞こえる。引っ越した当時は、これがどれほど恵まれた環境だったのか、全く気づかなかった。

引っ越して三ヶ月目のことだった。

毎朝、六時半にゴミ出しをしている。決まった時間に決まった袋を、五十メートルほど離れた収集場に持って行く。ルーチンワークだ。

ある朝、ゴミ袋を収集場に置いて、家に戻ろうとした瞬間、違和感が走った。

収集場の奥に、もう一つゴミ箱があるのだ。

「あ、昨日のがまだ置いてあった」

そう思って家に戻った。朝食を食べて、支度をして、家を出る。

その夜、ゴミ出しの時に確認すると、朝見ていたゴミ箱はなくなっていた。

「ああ、朝のうちに回収されたんだな」

そう思って忘れていた。

しかし、翌朝も同じだった。収集場の奥に、昨日のゴミ箱が立っている。

「また?」

いや、よく考えたら、収集場は二十時間ほどで回収車が来る。昨日のゴミが、翌朝に残っていること自体、ありえない。

でも、ゴミ箱はそこにあった。

三日目、僕は試しに、収集場にゴミ箱を置いて帰らなかった。家の中から、窓越しに収集場を覗いた。

夜中の一時。月明かりが収集場を照らしている。

ゴミ箱は、そのままであった。

二時を回った頃、収集場のフェンスの向こうに、人影が立った。

五十メートル以上離れているので、顔は看不清。でも、その人の持ち物がはっきりとわかった。

ゴミ袋を、一つ、収集場の隅に置いた。

そして、去っていった。

僕は窓から目を離さなかった。しかし、その人が誰なのか、全く分からなかった。

次の日、収集場のゴミ箱を確認した。

中のゴミは、全部、僕のゴミだった。

僕が朝、収集場に置いていったゴミが、全部、元のゴミ箱に戻されていたのだ。

生ゴミの袋さえ、元の位置に、元通りに並んでいた。

「誰かが、僕のゴミを、僕のゴミ箱に戻した」

その瞬間、血が凍るのを感じた。

なぜなら、そのゴミ箱は、僕の家から五十メートル離れた場所にあるからだ。誰も、そんなことをするはずがない。

しかし、四日目以降、ゴミ箱は収集場に戻らなくなった。

かわりに、毎朝、僕の家の前におかれたゴミ箱が、一つ、増えているのだ。

中身は空。でも、底に、小さな水たまりができていた。

そして昨日、ゴミ出しの時に、収集場の隅に、新しいゴミ箱が一つ、置いてあった。

中身は、僕のゴミではなかった。

古い写真が、一枚、入っていた。

写真には、僕の家のゴミ捨て場が、写っていた。

そして、ゴミ捨て場の隅に、小さな人影が、写っていた。

僕だった。