一級建築士の設計図面に赤ペンで追記された「部屋X」の平面図のみが墨黒く塗り重ねられている

設計図面の矛盾

建築業界に三十年務めたA氏は、定年前日に自腹で発注した印刷物の完成を見届けた夜、突然姿を消した。

残されたのは自邸の一室にあった二〇六枚の設計図面と、建設業法に基づく「許可応札入札書類」であった。

その中の一枚——通称「部屋X」と呼ばれる平面図だけが墨で塗り潰されていたため、中身は確認不可能だった。しかし図面の隅に小さく記された「面積:9.85㎡、用途:居住用・最終配置図」の文字だけは読めた。

A氏は生前において、当該物件の一階から三階まで完成済であることを公言していた。ただし、設計図面には四階部分の詳細図が百六十七枚にわたって用意されていたのだ。

建設許可証の記録(国土交通省より取得)

{ class=”wikitable”;style=”text-align:right”    
  - ! 届出番号   13-0894-X
  - ! 対象物件   A氏宅地・敷地面積
  - ! 登録面積   二〇四㎡
  - ! 用途地域   第1類低層住居専用地域
  - ! 備考   「計画延べ床面積」欄に追加記載: 「別表4-X号に定める部屋構造は施工後、変更不可」と記述。ただし別表4-X号は提出書類に含まれない。}

建設許可申請時には図面の枚数について厳格な照合が行われる。しかし本許認可では「別表4-X号」が存在しないまま通達されている——国土交通省の記録には当該ファイルが未登録のまま現在に至るまで放置をされている状態である。

自邸の実態(関係者に取材)

A氏の隣人であるB氏は「三階建ての家だ」「それ以上では決してなかった」と述べている。

ただしA氏本人は友人C氏が自宅を訪れた際「四階の部屋は完成直後だから、まだ埃が舞っているのだよ」と語ったという。

C氏は帰宅後、電話で「家の裏に足場が組んであるのを見た」「しかし窓がない。窓もないのに外壁が完成しているのが怖い」と供述した。

最終所見

調査は以下の事実を明らかにした。

  1. A氏の自邸には実在する階数は三層のみ
  2. しかし設計図面には四層分以上の詳細図が含まれている
  3. 「部屋X」の面積(9.85㎡)は自邸内のどこにも対応するスペースが存在しない——それは設計段階において敷地外にまで伸びている
  4. 建設許可応札書類中の「別表4-X号」に記すべき図面資料は、提出者側の不手際ではなく行政側の未作成状態が続いている