中古スマホに残っていた、僕の写真
2026年08月13日
知人のエンジニア、田中が先日、中古スマホをメルカリで買った。
iPhone 14 Pro。状態もよく、値段も相場より三割ほど安かった。「運が良かった」と彼は喜んでいた。
初期化して、自分のApple IDでログインし直す。写真も音楽も、すべて新規にセットアップし直した。問題はなかった。
三日目、彼は写真アプリを開いた。
「あれ」
iCloud の同期が完了してない写真が、ローカルにいくつか残ってる。初期化しても、iCloud 同期が完了する前に撮影された写真が、端末のローカルストレージにわずかに残っていることがある。彼はそのことを知っていた。削除すればいいだけの話だ。
しかし、その写真群に、見覚えのないフォルダがあった。
「撮っておいた」
フォルダを開くと、三十枚ほどの写真が並んでいた。どれも、彼が今住んでいるマンションの外観を捉えたものだった。
ビル全体を写したものから、バルコニー、窓ガラス、そして彼の寝室のカーテンが開いた瞬間まで。
田中は背筋が凍った。
これらの写真は、彼がそのマンションに引っ越す前に撮影されている。前の住人が、彼が入居する前から彼の部屋を撮り続けていたのだ。
「前の住人……」
彼は震える指で、写真の詳細情報を開いた。撮影日を確認する。
一番古い写真が、彼の入居日の二ヶ月前に撮影されていた。最新の写真が、彼が入居したその日の夜に撮影されていた。
そして、写真の枚数が三十枚だった理由も、あとでわかった。
最後の一枚は、彼の寝室の窓から、外側のベランダに設置された監視カメラのような角度で撮られていた。写真の端に、小さな赤いLEDの光が写っていた。
田中は、その中古スマホをすぐに破棄した。
しかし、問題はそこではなかった。
彼が気づかなかったことがある。
三十枚の写真のうち、十五枚が「彼が寝室にいる最中に」撮られているということに。