住んでいない階でエレベーターが止まった夜
2026年08月20日
実録話。知人が語っていたので、そのまま載せる。
知人は東京・世田谷のマンションに一人暮らしをしている。23歳、社会人2年目。
その夜は残業で、たしか2時回まわりの帰宅だったと思う。
エレベーターに乗って12階を通過した瞬間、奇妙なことに気づいた。
エレベーターの表示が、11階で止まったまま、それ以上動かない。
「あ、外れた?」
そう思いつつ、ボタンを何度か押したが反応しない。非常ボタンも押したが、鳴りっぱなしで誰も出てこない。
知人はスマホのライトで中を照らしたが、鏡に映る自分の顔だけがいた。
それから10分ほど待った頃、ふと気づいた。
エレベーターの表示が、11階から「10階」に変わったのだ。
知人が住んでいるのは8階だ。10階で止まる理由がない。
「なんか怖いから、10階のボタンを押さないで」
そう呟いた瞬間、エレベーターが再び動き出した。
表示は10 → 9 → 8。
8階で止まった。知人の階だ。
ドアが開いた。廊下は真っ暗で、非常灯だけがぼんやりと光っていた。
知人は慌ててエスカレーターで降り、玄関で鍵を開けて部屋に入った。
振り返ったとき、エレベーターの扉がゆっくり閉まっていくのが見えた。
その時、知人は「エレベーターの中に、誰か立っていた」ことに気づいた。
鏡に映った自分の隣に、黒い影が、微笑んでいた。
それ以来、知人はエレベーターに乗るとき、鏡に映る自分の横を必ず確認するようになった。
そして、住んでいる階以外の階でエレベーターが止まるたびに、背筋が凍るという。