実録話。知人が語っていたので、そのまま載せる。


知人は東京・世田谷のマンションに一人暮らしをしている。23歳、社会人2年目。

その夜は残業で、たしか2時回まわりの帰宅だったと思う。

エレベーターに乗って12階を通過した瞬間、奇妙なことに気づいた。

エレベーターの表示が、11階で止まったまま、それ以上動かない。

「あ、外れた?」

そう思いつつ、ボタンを何度か押したが反応しない。非常ボタンも押したが、鳴りっぱなしで誰も出てこない。

知人はスマホのライトで中を照らしたが、鏡に映る自分の顔だけがいた。

それから10分ほど待った頃、ふと気づいた。

エレベーターの表示が、11階から「10階」に変わったのだ。

知人が住んでいるのは8階だ。10階で止まる理由がない。

「なんか怖いから、10階のボタンを押さないで」

そう呟いた瞬間、エレベーターが再び動き出した。

表示は10 → 9 → 8。

8階で止まった。知人の階だ。

ドアが開いた。廊下は真っ暗で、非常灯だけがぼんやりと光っていた。

知人は慌ててエスカレーターで降り、玄関で鍵を開けて部屋に入った。

振り返ったとき、エレベーターの扉がゆっくり閉まっていくのが見えた。

その時、知人は「エレベーターの中に、誰か立っていた」ことに気づいた。

鏡に映った自分の隣に、黒い影が、微笑んでいた。


それ以来、知人はエレベーターに乗るとき、鏡に映る自分の横を必ず確認するようになった。

そして、住んでいる階以外の階でエレベーターが止まるたびに、背筋が凍るという。